妊婦614人に認めた皮膚病変の統計学的調査
慶田 朋子 川上 理子
要旨
妊娠中にみられる皮膚病変の傾向を調べるために,過去5年間に皮疹を主訴に聖母病院皮膚科を受診した妊婦614人について,疾患別にRetrospectiveな統計学的調査を行った.結果は湿疹・皮膚炎群が約半数(52%)を占め,各種感染症があわせて22%,痒疹・蕁麻疹群が15%,皮膚腫瘍が7%であった.これらを別の観点で分類すると1)妊娠による生理的な変化が2例(0.3%),2)妊娠に特異的な皮膚病変が57例(9.6%),3)もともとある皮膚疾患の妊婦による変化が41例(6.6%),4)妊娠と無関係な皮膚疾患が妊娠中に出現したものが517例(84.2%)であった.今回の統計の結果,妊娠の皮膚疾患のほとんどが湿疹・皮膚炎群を主として日常診療上しばしばみる皮膚疾患であり、妊娠が関連する皮膚疾患は15%程度であることが確認できた.その治療に関しては妊娠中であることから制限を受けるため,妊婦における湿疹,痒疹などの瘙痒性疾患の治療は,外用剤が中心となる.それで不十分な場合に,妊婦でも可能な内服薬についても考察を加えた.