医学雑誌『産科と婦人科 増刊号「産婦人科処方実践マニュアル」』論文掲載(掲載ページp76~79)

産婦人科医師のための学術誌、『産科と婦人科 2016年増刊号「産婦人科処方実践マル」』に院長の論文が掲載されました。

産婦人科治療の基本は保存的療法と手術療法です。保存的療法の主役は薬物療法であり、適切な薬物療法により、病態を大きく改善することもあるため、大変重要な役割を占めていると考えられます。
院長が依頼された内容は、

「第1章 周産期分野」の中の、「B.妊娠中の合併症」のうち、「湿疹(妊娠性痒疹も含む)」についてです。

慶田院長が2006年に発表した妊婦の皮膚病変の統計学的調査(5年分)では、約半数が湿疹・皮膚炎群(52%)であり、次いで痒疹・蕁麻疹群(15%)、ウイルス性感染症(10%)と続き、妊娠に特有の症状は約10%と比較的頻度が低いものでした。
湿疹・皮膚炎群は湿疹とアトピー性皮膚炎が2/3を占め、次いで手湿疹、接触性皮膚炎などが多くみられます。アトピー性皮膚炎は妊娠中に増悪することが知られており、特に妊娠初期から中期に多い症状です。
これらの治療には、第一に局所への外用療法が選択されます。その場合の第一選択薬はステロイド外用薬です。妊婦に対しては、ステロイドの中でも、局所的効果は強力でありながら、全身への副作用が少ないantedrugを選択するべきです。非妊娠時と同じように、タクロリムス水和物軟膏(プロトピック軟膏)の外用も安全に使用できます。タクロリムスは臓器移植後に免疫抑制剤として投与される内服薬がありますが、妊娠中の内服で先天奇形の増加は認められていません。
また、重篤な妊娠性痒疹の場合には抗ヒスタミン薬の内服やNB-UVB照射を併用することもあります。免疫調整作用から尋常性乾癬などに有効性を発揮し、注目されている治療法です。
妊娠中の皮膚疾患、特にアトピー性皮膚炎の増悪に関しては、免疫状態の変化が影響していると考えられます。また胎児への影響を懸念して、自己判断で外用治療を中止したり、使用量を減量してしまっていることも誘因となっています。きちんと治療を継続することが、母体の健康ひいては胎児の健康にもつながります。
妊娠中の皮膚病変に詳しい皮膚科専門医にご相談ください。


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