雑誌『&ROSY/アンド ロージー』2017年9月号(7月23日発売 掲載ページP26~45)

特集「じつは冬以上に過酷かもしれません、その夏肌 大人は夏こそ、保湿コンシャス」に慶田院長の監修記事が掲載されました。

<「乾燥対策は、冬にしっかりすれば大丈夫でしょ!?」いえいえ、夏肌も「乾き」の大敵がいっぱい!>
夏は外気の乾燥こそ感じないけれど、それ以上に肌が干からびる危険にさらされているのです。勘違いしたまま保湿ケアを怠っていると、肌がゴワゴワ、シワシワになってしまうので要注意なのです!

●光による乾燥
遺伝子にダメージを与え乾燥=老化を促進させる
老化の原因の8割は光によるもの。肌を老けさせる光には紫外線や一部の近赤外線、ブルーライトがあり、これらに当たった瞬間から細胞の中では酸化が進行します。そのダメージは遺伝子に傷をつけるくらい深刻なもの。太陽=放射線だと思ってもらえは、その深刻さが分かるはず。紫外線やブルーライトによりメラニン生成スイッチが入り、過剰になればシミやくすみが生じます。また、これらの光により傷ついた細胞は正常な水分保持能力を失い、早くに浮き上がり剥がれてしまったり、新しく生まれ変わる肌のターンオーバー機能も狂ったりして肌が乾燥します。乾燥は肌のバリア機能が崩れている証。バリア力が低下すれば、炎症を契機にシミやシワなど老化へとつながります。
最近の研究では、太陽光中の近赤外線が、肌の水分保持や組織再生力に関与するバーシカンという成分を減らすという研究結果もでており、肌にダメージを与えるのは、紫外線だけではないことが分かっています。

●栄養不足による乾燥
夏バテからの食欲不振が肌にも悪影響を与える
暑さや湿度により夏バテ気味になると、どうしても食事の内容が偏ってしまうもの。味つけがあっさりしている、喉越しがいいなど、栄養面とは別のメリットで食事を選びがちですが、そういうもののほとんどは栄養価が低いものです。なかでも夏に顕著なのは"たんぱく質不足"に陥る女性が多いこと。生命維持に必要な臓器などが優先的にタンパク質を使用するため、充分な量を供給していないと肌や髪は慢性的にタンパク質不足になり、美しい状態は望めません。
夏に摂るべきタンパク源として、レーバーなどの肉類、うなぎ、 卵、豆類、チーズなどがおすすめです。これらには、抗酸化力の高いビタミンAとビタミンE、肌のターンオーバーに役立つビタミンB群もたっぷり含まれています。

●室内環境による乾燥
「快適」を生むエアコンで肌の乾燥が一気に加速!
多くの人が日中、長時間を過ごすオフィスは、年間を通して〝標準〟とされている〝湿度40%〟に達しているところがなかなかありません。エアコンの温度は〝28℃〟が推奨されていますが、守られているのは一部の大手企業くらいで、小規模のオフィスやデパート、特にレストランなどの店舗は震えるくらい室温を冷やしています。それに加えて夏は〝不快〟と感じる湿度を落とすため、ドライ機能を使って乾燥を促進させるのも特徴。こういった環境に長時間入れば、肌が乾燥しないはずありません。

●汗による乾燥
汗そのものは無菌でも肌を刺激する要素はあり
汗=塩基類・ミネラル系の物質は、角層の刺激になることがあります。健康な肌なら汗が付着した状態で数時間いても何も起こりませが、肌のバリア機能が低下していたり、アトピー肌だったりすると汗を刺激として受け取るため、かゆみや炎症が起こります。赤みを伴わず、肉眼では分からない湿疹として発症していることもあり、自覚していない方も多くいます。夏は外に出たり、屋内へ入ったりで、汗をかいたり、乾いたりを繰り返すもの。そうするうちに汗が濃縮され、肌あれが起こる要因も濃くなるので、こまめに濡れたハンカチでふき取りなどの対策が必要です。

●睡眠不足による乾燥
暑さで睡眠の質が下がると肌再生に影響が!
暑い季節は体力が奪われがちなので、自分が感じているよりもからだに疲労がたまっています。就寝時も気温が高いため寝苦しく、日中の疲労のせいもあって夜中に何度も目を覚ましてしまいます。これも肌再生への悪影響となり、乾燥につながるのです。ゴールデンタイムと呼ばれる22~2時の睡眠が難しくても、睡眠に入ってから3時間は妨げなくぐっすり眠ることが必要。暑さを回避するためにはエアコンの活用もありですが、肌環境においては乾燥を促進させるので冷やし過ぎは厳禁です。万全のスキンケアをする、湿度管理をするなどの対策を立てましょう。

繰り返し刺激を受けたり、炎症を起こしたりした肌はバリア機能が低下し、肌の潤い力が落ちます。そこでバリア機能をなんとかカバーし肌を守ろうと、角層が厚くなります。ただ緊急で作られた角層は機能が不完全なので、水分が浸透しにくくなり、潤い力が落ちます。この状態が続くと、潤う機能自体も低下し、乾燥がどんどん乾燥していきます。こうして、肌のターンオーバーが乱れ、夏肌の「負のスパイラス」に陥っていますのです。
夏の様々な乾燥原因による、この連鎖を断ち切るために見直すべきは、毎日のお手入れ。スキンケアの心得は、肌を正しく、清潔にすること。そのためには、【優しく落とす】【くまなく潤す】このふたつが大切。とにかく肌に刺激は大敵。せっかくのスキンケアも刺激になってしまったら台無しです。洗い方・潤し方の全てを正しく行うことが肝心です。
<ほとんどの人が「やり過ぎ」ている、クレンジング&洗顔法を見直しましょう「落とす・洗う」と乾燥の関係>
毛穴の奥まできれいにしたいと、時間をかけたり、道具をつかうほどに、キレイからは遠ざかっているかも知れません。「優しく洗う」ことがなぜ必要なのか、納得できれば実践もできます。

●むやみに洗うのではなく、何を落とすのか、考えてみる
スキンケアの3大要素は〝洗浄〟〝保湿〟〝光対策〟。そのファーストステップになるのが〝洗浄=落とす〟こと。顔の限らず人はなぜ〝洗う〟のか、落としたいもが何なのかをきちんと認識することから始めましょう。まずは、汗・皮脂・垢などの〝からだからの分泌物〟です。汗同様、自分が分泌したものでも肌はかぶれたり、荒れたりします。赤ちゃんが〝よだれかぶれ〟するのも同じこと。放置しておくとそれらは刺激となるので、1日1回は落とすべきです。次に〝外から付着するもの〟。砂ぼこり・大気汚染物質・花粉・メイク・揚げ物の油まで、様々なものが肌の刺激になります。このふたつが美肌を損なうため、朝晩のスキンケアでリセットするべき汚れなのです。
肌を洗うと、どうしても一緒に潤いも流出してしまいますが、理想的なのは不要な汚れを確実に落とし、必要な潤いはできるだけ肌に留めること。

●落としたいのは「汚れ」だけ。肌の潤いは極力残す
洗浄のポイントは、〝不要な汚れだけを落して、肌が本来持つ潤いは残す〟こと。汚れの多くは油性のため、親油性である界面活性剤を使うと良く落ちます。〝油を落すには油〟というわけです。しかし、ここで問題なのが角質層で水分保持を担っている〝細胞間脂質〟も油ということ。だから、汚れを落そうとすると自前の保湿成分も一緒に落ちてしまい、乾燥の引き金となってしまうのです。流失をゼロにすることは不可能ですが、限りなくゼロに近づける工夫は必要。〝汚れを落とす〟と〝潤いの流出〟のバランスをギリギリのところでとるために、洗浄方法やアイテム選びに気を配ってみるといいでしょう。

●洗浄剤だけで汚れの大半は落ちるのに...乾燥を上塗りするのは「洗い方」
NG!ジャバジャバ:摩擦は手やブラシだけで起こるものではありません。水圧だって同じこと。洗面所で、バスルームで肌に勢いよく水を当てることも、思いのほか肌の刺激になっています。
NG!ゆっくり:界面活性剤が肌にのっている間中、角層から細胞間脂質が溶け出してしまします。じっくり、ゆっくりのクレンジングや洗顔は、摩擦を与えていなくても肌の潤い流出に加担しています。
NG!ゴシゴシ:摩擦は角層をシェーブするようなもの。保湿クリームを塗らずカミソリでムダ毛を処理すれば角層を削ってしまいますが、あれと同じようなことが洗顔時に残っているのです。

●夏のクレンジングでちょっと気になることQ&A
Q.外出先でヨレたメイクを優しく落とすのは?
A.クレンジングではなく少量のクリームでオフ
綿棒の先にクリームをつけてヨレた部分に塗れば落ちます。同じ油分でできたクレンジングとクリームの違いは〝洗い流しが必要かどうか〟なので、ちょっとしたヨレはこれでOK。
Q.しっかりメイクした目元を優しく落とす方法は?
A.コットンを2枚に割いて目元に置けば摩擦が起きにくい
ウォータープルーフのマスカラやアイラインを落とす時などは、コットンに専用クレンジングをたっぷり含ませ、2枚に割いて1枚は下まぶたの上に、1枚はまつ毛の上からのサンドイッチ戦法を。マスカラを拭う際、下まぶたに押しつけると摩擦が起きるので、コットンをはさんでおき、その上を滑らせて。最後に二つ折りにしてキレイな面でアイラインを優しくオフしましょう。

<洗顔後、化粧水の前に1ステップ挟んで保湿力アップ「潤道」を作るブースター>
毎日、一連の流れ作業のようにスキンケアをしていませんか?しかも夏は「べたべたするから」という理由で保湿不足の人が多いという現状も。でも夏の乾燥度合いを知ったら、化粧水だけで終われないはず。きちんと肌に響く、保湿ベースのスキンケアを見直しましょう。
「プレ化粧水」や「導入液」とも呼ばれるブースター。化粧水前につけることで、その後のスキンケア用品の浸透を助けるもの。お手入不足の人、日焼けなどの影響で角層が厚くなっている人は効果を感じやすいでしょう。ひと手間で潤いがアップするので、ぜひ試して。

<潤う準備ができた肌に、いよいよ本格的な保湿をスタート 大人の肌を救う、保湿重視のスキンケア>
保湿が手薄になっている夏のスキンケア、外気の高い保湿と、汗のベタつきで「乾燥してない」と勘違いしないこと。しっかり届いて潤うコスメを選べば、乾燥しにくい揺らぎにくい肌が現実可能に。

●保湿の要は細胞間脂質!整った角層は揺らぎにくい
保湿とは、肌の水分量を保つことです。角層は肌のもっとも表面にあり、皮脂膜・天然保湿因子(NMF)・角質細胞間脂質により保湿されています。この3つのうち、水分保持の役割の80%を担っているが角質細胞間脂質。角質細胞間脂質の主成分はセラミドで全体の50%。自身の角質細胞が作り出す脂質で、角層の間に水を抱え込みながら、細胞同士を密着させる作用があります。例えばアトピー性皮膚炎がある人は、そうでない人と比べると、セラミドの量は1/3しかありません。つまり、セラミドをはじめてとする保湿成分を角層にきちんと届ければ、潤いのある肌を保つことができるのです。

●夏は特に、抗酸化成分に着目したコスメ選びを
夏は美白ラインのコスメが好まれやすいのですが、これは夏に限らず通年使用していいもの。短い期間の使用では、長い目で見るとあまり効果が期待できないからです。一品だけでもいいので毎日のスキンケアに取り入れてみるといいでしょう。夏は紫外線に始まり、からだや肌が酸化の危機にさらされている季節。狙いを定めるなら抗酸化成分配合のコスメです。酸化も肌の乾燥を促進させてしまうので、保湿成分の補給とともにサビ対策と打てば潤った肌を実現する近道に。抗酸化でベーシックな成分は、〝ビタミンエース〟と呼ばれるビタミンA・C・Eですが、様々な種類があるのでぜひチェックしてみてください。
SELECT POINT
☑浸透力が高い
☑抗酸化成分配合
☑ベタつきにくい

抗酸化ベーシック成分
ビタミンA:化粧品には「レチノール」という名前で配合され、特に抗酸化作用が高い成分。脂溶性のため浸透力が高く、紫外線吸収剤として自らが壊れることで日焼けの害も生じにくくしてくれる。
ビタミンC:メラニン還元効果を持つ抗酸化成分。「黒を白にする」ほどのパワーを持つが、製品によって浸透力に差があるため、浸透力の高い分子構造のものをきちんと選ばないと期待する効果が得にくい。
ビタミンE:「サビ止めのビタミン」と呼ばれる高い抗酸化作用を持つ。ビタミンCと一緒に使用すると、相乗効果でより強い抗酸化作用を発揮。メラニン色素を含んだ古い角質もスムーズにオフできる。

日本の夏は湿度が高く、乾燥とは無縁と思っている方が多いのですが、実際のところ夏肌の実情はカラカラです。強力な紫外線、エアコンによる乾燥、さらに夏バテでエネルギーを消費してしまうと、肌まで栄養が行き渡りません。毎日のスキンケアで、夏の正しい乾燥対策を学びましょう。

ぜひ、ご一読ください。

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