女性の場合、閉経近くなると卵巣の働きが低下し、卵巣から分泌される女性ホルモン(エストロゲン)が急激に低下します。50歳前後の女性の方とお話しても、急に気分がふさいだり、体調の波が激しいとか心と身体に症状がでるようです。
元々ポジティブで元気な方たちであるため、女性ホルモンの支配はウエイトが高いのでしょうね。このホルモンの変化があまりに急激なため、身体がその変化に十分についていけなくなると、自律神経失調症状といった様々な症状(冷えやのぼせ、発汗、不眠、頭痛など)があらわれることもあります。
この症状がひどくなると、日常生活や社会生活の上でも支障をきたすことがあります。ホルモン補充療法とは、この急激なエストロゲンの減少に対して、必要最小限のホルモンを補充することでその変化の幅を緩やかなものにし、閉経したあとのホルモン環境に身体を適合させていく手助けをする治療法です。
欧米の女性は約半数が治療を受けていますが日本ではそこまで普及されていません。治療の目的は、急激に減少するエストロゲンを必要最小限に補充することですが、エストロゲンだけを補充すると、子宮からの出血や乳房のはりなどの副作用を伴うことが多いため、それを防ぐために黄体ホルモン(プロゲストロン)を併用していきます。
この2種類のホルモンを補充していくのが基本的な方法です。ピルとの違いですが、ピルに含まれているエストロゲンの強度は、ホルモン補充療法で使用する4倍以上あります。このため閉経後も長時間ピルを継続すると、乳がん、血栓症などのリスクが増えてしまします。治療効果は、開始後、数日あたりから実感できます。エストロゲンの低下に起因する症状以外には効果は期待できないため、心因性の不眠、いらいらなどでは心療内科での治療、漢方療法など併用していく必要もあります。女性なら避けては通れない更年期、正しい知識のもと快適に過ごしたいものです。
ホルモン療法ができないかたもいらっしゃいます。具体的には、乳がん、子宮体がんのかた、血栓症の治療薬を処方されているかたには治療できません。一番心配されるのはガンとの関連かと思います。ホルモンの影響で増殖する子宮内膜や乳腺細胞由来のがんについては、ガン化を助長するのではと懸念されています。最近の子宮体ガンとの関連を調べた多数の報告では、黄体ホルモン剤を併用することにより、ガン発症のリスクは増加することがないと実証されてきています。
乳がんとの関連では、エストロゲンとプロゲストロン併用療法を5年以上の長期に実地した場合、わずかですが乳がんの発症率が上昇するそうですが、死亡率は低いとの報告があり、ホルモン補充療法により潜在的な乳がんが発見しやすくなり、予後自体も改善されているそうです。上記疾患以外で日常生活に支障がでるかたは、積極的にとりいれることをすすめます。