【皮膚科専門医が解説】~乳首&バスト周りのお悩み・疑問にお答え!~ブツブツ、ザラザラ、痒み、黒ずみ、ムダ毛
1. 乳首のお悩みあれこれ
バストや乳首に関するお悩みはあっても、人には言いづらい、聞きづらいものですよね。しかもデリケートな部位だけに、治療のタイミングを逃してしまうと、単なる悩みで済まされない、ひょっとしたら病気が隠れていることもあります。
女性の皆さんから寄せられるお悩みを、皮膚科専門医として、女性の立場でひとつひとつお答えしていきたいと思います。
■乳首が痒い!
乳首やその周りが痒いと訴える女性は、かなり多くいらっしゃいます。原因は、ブラジャーによる擦れや汗による刺激がほとんどです。まず始めに「あなたが着けているそのブラジャーは、ジャストサイズですか?」とお聞きしたいです。
もし、痩せてしまってフィットしてないブラジャーならば、中で乳首が擦れてしまいますし、きつ過ぎると圧迫が刺激になります。ストレスの元ですので、サイズを計測してきちんとフィットするものを選んでください。
またブラジャーについているレースや下着の縫い目が乳首にあたって、その刺激で痒いこともよくあります。レースやフリルのついたかわいらしいブラジャーは、特別な日にとっておいて、普段は肌への刺激が少ない、通気性の良いものを選びましょう。肌当たりを重視するのなら、コットンやシルクをおすすめします。
運動する時には、しっかりホールドできるタイプのものを着ることや、吸水性に優れた機能性下着を選ぶことで、擦れや汗による刺激を抑えると痒みも治まって来るでしょう。
症状がひどいときには、キャミソールなどのインナーを着た上からブラジャーをするという裏技もあります。
乳首がグジュグジュしている、引っ掻いてしまった、と言う場合は湿疹をおこしていますから治療が必要です。恥ずかしがらず、早めに皮膚科専門医にご相談ください。
■乳首の色が左右で違っている!
痒いからといって、乳首を掻いたりしていると炎症がひどくなり、それ繰り返すうちに片方だけ黒ずみが目立つようになるケースもあります。左右の色の違いに限らず、自分の乳首の色が人と比べて濃いのではないかと気になっている人も多いと思います。
しかしコンプレックスに感じる必要はありません。メラニン量が多い日本人の乳首は白人のモデルのようにピンク色ではないのは当たり前で、比べても仕方ないのです。一般的にホルモン値が高い若い女性の方がメラニン活性が高いので、乳首の色が濃くなります。一方で高齢になるとメラニン量が減るので、色素が少しずつ薄くなっていきます。
かゆみが止まらず、色も目立つようになってきたら、皮膚科を受診することをおすすめします。
■乳首に太い毛が生えてきた!
体に生えている他の体毛と同じように、体質によって量の個人差があるものですが、ホルモンの影響で、出産前後に毛が増えたり、濃くなったりする人もいます。
デリケートな部分なので、自分で抜いてしまうと炎症を起こすこともあるので、おすすめしません。目立たなくしたい気持ちも分かりますが、毎日、抜いたり、剃ったりするのはやめましょう。剃毛すると皮膚の角層が剥がれて無防備な状態になり、湿疹ができやすくなりますし、細菌などに感染する恐れも高くなります。
最近ではホームケア用の光脱毛器も出回っていますが、肌色の濃い部分に使うと、火傷の危険もあるので避けましょう。
クリニックで行われている『医療レーザー脱毛』が安全です。当院では、『ジェントルレーズ・プロ』を使用して脱毛を行っています。
これは日本で初めて『医療レーザー脱毛』の薬事認証を受けた医療機器で、デリケートゾーンなど、生理的に色素の濃い部分の脱毛も安全に短時間で照射し、半永久的に毛が生えてこなくなります。さらに、レーザーの美白作用に加え、熱作用で皮膚も引き締まるので、継続すると肌のハリと透明感が高まります。
余りにも毛の量が多い場合は、多嚢胞性卵巣症候群(PCO)という病気の可能性もあるので、皮膚科医もしくは婦人科を受診しましょう。
2. 乳首のお悩みあれこれ
乳首だけではなく、バストの皮膚悩みもたくさんあります。
■ブラジャーが当たるところが痒くてしょうがない!
ブラジャーのワイヤーが当たる胸のアンダーラインの辺りが痒く、かぶれたようになって、かき壊してしまったという声も良く聞きます。厳密にいうと"かぶれ"は、アレルギー物質に触れ続け、感作されたことにより起こります。
ブラジャーのワイヤーは露出していませんし、布でかぶれるという可能性は低いので、「汗荒れ」と呼ばれる湿疹の状態だと考えられます。肌の弱い人は、自分の汗さえも刺激になってしまうので、トイレに行ったときに、濡れたハンカチなどでブラジャーが当たる部分の汗を拭き取ることをおすすめします。
■胸の谷間がザラザラしている!
ひょっとしたら、そのザラザラは『ニキビ』かもしれません。胸やデコルテは脂漏部位と呼ばれ、皮脂腺が大きく発達した毛穴があるエリアです。夏場の暑さや紫外線や汗の刺激などで、コメドと呼ばれる小さなニキビが出来やすいのです。毛穴が詰まると皮脂を好むアクネ菌が増えて赤いニキビも出来やすいのです。
もともとニキビができやすい体質の人はいます。皮脂腺は男性ホルモン(テストステロン)の作用を受けるので、テストステロンを高活性のジヒドロテストステロンに変換しやすい遺伝素因があると皮脂量が多くなります。
そこに、様々な刺激で角層が厚くなり、毛穴が詰まるとコメドになります。日々のケアとして優しく洗い、蒸れない衣類を着用しましょう。発熱素材のインナーはニキビが増える人もいるので注意しましょう。どうしても気になるときには、皮膚科専門医に相談し、『ケミカルピーリング』を受けるのがいいかと思います。余分な角質を取り除くことで皮膚の新陳代謝を高めてくれます。
■肌色のぶつぶつができている!
これはアクロコルドンや脂漏性角化症と呼ぶ『老人性のイボ』です。老人性イボは、顏、首、全身にできます。胸やデコルテの場合、肌色~薄茶色のブツブツが目立つので気になりますよね。体質的にできやすい人もいますが、主な原因は日焼けによる光老化です。
デコルテの開いた服では、斜め上から日差しを受けるので要注意です。子どもの頃に浴びた紫外線の影響を消すことはできませんが、年齢とともに抗酸化力が低下するので、毎日の習慣として日焼け止めを塗り、紫外線対策をするのが大切です。
当院では『CO2レーザー手術(炭酸ガスレーザー手術)』で老人性イボの治療を行っています。ごく浅く削るだけで除去でき、出血もほとんどなく、5~7日で傷は上皮化します。小さいうちに治療すれば傷跡も目立たなく、1回できれいに治ります。
美しいバストは自信につながります。ひとりで悩まないで、専門医の手を借りて、不安を取り除いていきましょう。