【全身の乾燥対策】目も口も肌も...冬に起こりやすい乾燥の連鎖「ドライシンドローム」とは?
外気は冷たく乾燥しているうえ、室内でも暖房が欠かせない冬は、屋内外問わず常に乾燥を感じる季節です。とくに乾燥がピークを迎える1~2月は、顔だけでなく、全身の乾燥を訴える人が急増します。乾燥状態を放置すると肌は炎症を起こし、治りにくい皮膚炎のきっかけになり、老化が進む要因になります。とくに40歳以上の女性は女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が低下するので、乾燥症状が悪化しやすくなります。「ただの乾燥」と放っておかずに、正しい知識とケアを取り入れて、本格的な乾燥シーズンを乗り切りましょう。
- 1. 冬に起こりやすい乾燥の連鎖「ドライシンドローム」とは?
- 2. 乾燥は「皮脂欠乏症」という皮膚疾患
- 3. 乾燥からくる痒みの連鎖で深刻な皮膚炎を引き起こすケースも
- 4. 自宅ですぐにできる乾燥対策
- 5. 乾燥しやすいパーツは特別なケアを
目次
1. 冬に起こりやすい乾燥の連鎖「ドライシンドローム」とは?
ところで、最近メディアでも話題になっている「ドライシンドローム」という言葉をご存じでしょうか?医学用語ではありませんが、肌や目、口腔内、女性器など、全身に起こる複合的な乾燥の連鎖を表す言葉です。主にドライマウス(口の渇き)、ドライアイ(目の乾き)、ドライスキン(肌の乾き)、ドライバジャイナ(腟の乾き)の4つを指し、全身に発生する「渇き」を一つの症候群として捉えています。冬に起こる乾燥の連鎖は、実はこのドライシンドロームが起きているのかもしれません。
2. 乾燥は「皮脂欠乏症」という皮膚疾患
多くの女性は、肌質を聞かれたときに「乾燥肌」と答えるのではないでしょうか。それほど乾燥を感じている人が多いということですが、このいわゆる乾燥肌のことを医学用語では「皮脂欠乏症」と言い、実は皮膚疾患のひとつです。定義的には、「皮膚の表面にある皮脂が減少し、角層の水分量が少なくなり、肌が乾燥している状態」を指します。
「ただ乾燥しているだけ」と軽く捉えがちですが、放置してしまうと皮膚が白い粉をふいたような状態になり、次第に運動や入浴などで体が温まると痒みを感じるようになります。
3. 乾燥からくる痒みの連鎖で深刻な皮膚炎を引き起こすケースも
なぜ乾燥すると痒くなるのかと言うと、乾燥することで痒みのセンサー(知覚神経)が過敏になることが原因です。乾燥すると皮膚の内部で軽い炎症が起こり、アレルギー症状を引き起こすヒスタミンが分泌されます。このヒスタミンが知覚神経を刺激し、さらに炎症を繰り返すことで、知覚神経が体の表面近くの角層まで伸びてきます。そのため衣服がこすれるなどのわずかな刺激でも痒みを感じるようになってしまうのです。
こうして、痒み→掻きこわす→さらに痒くなる→さらに搔きこわす......という悪循環が生まれ、炎症症状を伴う「皮脂欠乏性湿疹」やジュクジュクした「貨幣場湿疹」などの皮膚炎を引き起こすこともあります。ここまで症状が進んでしまうとステロイド外用薬や抗アレルギー薬を内服する必要が出てきますので、そうならないためにも、乾燥肌(皮脂欠乏症)をしっかりとケアしておくことが重要です。
4. 自宅ですぐにできる乾燥対策
では日常、どのような対策をすれば乾燥を予防できるのでしょうか?スキンケアによる保湿はもちろん大切ですが、毎日のライフスタイルを見直すだけでもかなりの効果が期待できます。
■ 入浴は40℃前後のお湯で10分程度に
冬はつい熱いお湯に浸かりたくなりますが、乾燥対策としては、熱いお湯で長風呂をしないことが鉄則です。基本的に皮膚が濡れている時間が長い、温度が高いほど、肌は乾燥しやすくなると思ってください。お湯の温度は40℃前後で、浴槽につかるのは10~15分程度にとどめましょう。痒くならない、乾燥しないという人はいつも通りの長風呂でも大丈夫です。また身体をゴシゴシ洗うことは禁物です。肌にあるうるおい成分をなるべく落とさないよう、しっかり泡立てた洗浄料でやさしく洗いましょう。保湿成分入りの入浴剤を使うのも効果的です。
■ 入浴後はすぐに保湿を徹底
入浴後の肌は水分が残っているためしっとりしていますが、それは一時的なものです。10分もすると肌の水分量は入浴前と同じレベルまで戻ってしまいます。髪や体をふいて乾かしている間に乾燥がどんどん進んでしまうので、湿気がある浴室や脱衣所にいるうちに、セラミドなどの保湿成分を含むクリームでうるおいを閉じ込めましょう。
■ 室内では加湿器で湿度コントロールを
乾燥した部屋では洗濯物がよく乾くように、肌でも同じことが起きています。だからこそ、この時季は加湿器の使用がおすすめです。ただし、飽和水蒸気量(空気が含むことのできる水蒸気量)は温度に比例するので、加湿器をつけるにしても、ある程度室温を上げないと部屋もうるおってきません。空気が冷たいといくら加湿しても結露するだけなので、まずは暖房などで部屋の温度を24℃くらいまで上げてから加湿器をつけ、湿度を50~60%くらいにキープしておくのが理想です。また、電気毛布や床暖房、こたつの使用は肌が確実に乾燥するので長時間の使用は控えましょう。
5. 乾燥しやすいパーツは特別なケアを
ドライシンドロームなどで全身が痒いというときは、乾燥しやすいパーツごとのケアも必要です。どの部位が乾燥しやすいのか、対策も含めてご説明します。
■ かかと
皮脂腺がないかかとは、体の中でも特に乾燥しやすい部分です。全体重を支えるために角層が厚くなり、ひび割れして出血してしまうこともあります。まずは硬くなった角質を、専用のアイテムを使って優しく削りましょう。さらにヒアルロン酸やセラミドのような水分を抱える成分や、角質を溶かす尿素などを配合したクリームで毎日保湿することが大切です。お手入れの最後に、角層を柔らかくする効果のあるオイルを重ねると、効果がさらにアップします。ただし削りすぎには注意してください。皮膚が持つ本来の防御機能を刺激して、逆に角質を厚くしてしまうという悪循環を招きます。1週間に1回くらいのペースで削るのがおすすめです。保湿を続けてもひび割れる場合は、水虫(角質肥厚型足白癬)の可能性もあるので、速やかに皮膚科を受診しましょう。
■ 唇
唇は女性らしさを象徴する大切なパーツですが、実は皮膚よりも角質層が薄く、とてもデリケートな場所でもあります。皮脂腺がないためバリア機能が弱く、自ら保護膜を作り出すことができないので、そもそもとして乾燥しやすい構造なのです。そのため外部からの刺激をとても受けやすく、外気が冷たい冬はさらに乾燥が進み、カサつき、皮むけ、血色の悪さ、くすみなどのトラブルが増えてしまいます。だからこそ、リップクリームやリップ美容液をこまめに塗ってしっかりと保湿しましょう。また唇が乾燥する原因は、寒気や空気の乾燥だけではありません。舐める、薄皮をめくる、調味料などの塩分を付けたままにする、という行為も乾燥に繋がるので避けてください。
■ すね、太もも、腰回り
足のすねや太もも、腰回り、背中も痒くなりやすいパーツです。服との摩擦が多いすねや腕はもともと皮脂量が少なくカサつきやすい部位ですし、腰周りも皮脂が出にくいので、忘れずに保湿を心がけましょう。弱ってバリア機能が低下している肌に摩擦は禁物なので、保湿するときは一気に塗り広げやすい乳液タイプがおすすめです。
■ お尻
意外なところでは、お尻が痒くなる人も少なくありません。乾燥だけでなく、座りっぱなしで起こる蒸れ、下着の縫い目やレースによる刺激などが原因であることも多いです。乾燥が気になるときは、肌にやさしいコットン素材で、縫い目のないシームレスタイプやボクサータイプの下着を選びましょう。
保湿ケアアイテムを選ぶときは「セラミド」が配合されているものがおすすめです。セラミドは肌の水分量やバリア機能を保つのに役立ちますが、更年期にはかなり減少してしまいます。スキンケアアイテムのほか、セラミド入りのサプリメントで補うのも良でしょう。
寒くて乾燥する季節はまだ続きます。肌の乾燥が気になったら放置せず、日々のセルフケアでしっかりとケアしましょう。