【ドライシンドローム】ドライマウス・ドライアイ・ドライバジャイナ 更年期と粘膜の乾燥~症状と自分でできる対策

【ドライシンドローム】ドライマウス・ドライアイ・ドライバジャイナ 更年期と粘膜の乾燥~症状と自分でできる対策

    年齢を重ねるにつれて、肌をはじめ、目や口が乾くようになった...と感じることありませんか?更年期になると、女性ホルモン(エストロゲン)の減少により、肌の乾燥が進むことはもちろんのこと、粘膜まで乾燥することをご存知でしょうか?今回は、そんな更年期に起こる粘膜の乾燥の症状と対策について解説していきます。

    目次
  1. 1.更年期に起こる乾燥の連鎖「ドライシンドローム」
  2. 2.「ドライシンドローム」の部位と主な症状
  3. 3.「ドライシンドローム」の症状別対処法

1.更年期に起こる乾燥の連鎖「ドライシンドローム」

女性ホルモン(エストロゲン)には、肌に潤いや弾力を与えるコラーゲンの産生だけでなく、皮膚や粘膜を保護し、潤いを保つ作用があります。ところが、更年期になると、自律神経の乱れやエストロゲンの分泌低下によって、皮膚や粘膜のみずみずしさが失われ、ハリがなくなるなどの変化があらわれます。さらに、皮膜が薄くなり、柔軟性が失われ、粘液の分泌量が減るなど、乾燥の連鎖が始まります。その結果、目、鼻、口、膣の粘膜など、肌だけではなく体全体が乾きやすくなり、目の乾燥が進めばドライアイや疲れ目、口の乾燥が進めば口臭、さらにデリケートゾーンの乾燥や萎縮など、さまざまな症状があらわれるようになります。

このように、皮膚や粘膜の乾燥が引き起こすさまざまな症状を総称して「ドライシンドローム」といいます。ドライシンドロームによる症状は、唾液や涙、皮脂などの外分泌腺の機能低下が原因で起こりますが、主に更年期に起こる女性ホルモンであるエストロゲンの分泌低下が関係していると考えられています。

ドライシンドロームは、プレ更年期からはじまり、年齢を重ねるにつれて発症する部位や症状が増加する傾向にあります。また、更年期を迎えていない若い人でも、出産や授乳、不規則な生活、睡眠不足、ストレス、無理なダイエットなどが原因でホルモンバランスが崩れることで、同様に起こることがあります。

2.「ドライシンドローム」の部位と主な症状

ドライシンドロームとは、口や目、肌、鼻、膣など全身の乾燥を指す症候群です。ドライマウス(口の渇き)、ドライアイ(目の乾き)、ドライスキン(肌の乾き)、ドライノーズ(鼻の乾燥)、ドライバジャイナ(膣の乾燥)などがありますが、主に粘膜の乾燥を起因にした症状が多いのが特徴です。

■ドライマウス(口):口の渇き、口臭、虫歯、歯周病、味覚異常、食べ物が飲み込みにくい、話しにくい

■ドライアイ(目):目の乾燥、痛み、かゆみ、充血、疲れ、視力低下

■ドライスキン(肌):皮膚のつっぱり感、カサつき、粉ふき、かゆみ、湿疹

■ドライノーズ(鼻):感染症・アレルギー

■ドライバジャイナ(膣):デリケートゾーンの痛み、かゆみ、出血、性交痛、臭い、感染

3.「ドライシンドローム」の症状別対処法

ドライスキンについては、【更年期世代の肌トラブル】シミ・シワなどエイジングが加速、乾燥が全身(ドライシンドローム)に及ぶことも!トラブルを回避する対策とは?の記事を参考に。その他の症状と対処法について順にご紹介していきます。

ドライマウス

ドライマウスは唾液の分泌量が減少し、口の中が乾く状態です。エストロゲンの減少により粘膜が乾燥することをはじめ、自律神経のバランスが崩れ、唾液の調整も乱れることが原因と考えられています。ただし、糖尿病など、ほかの病気の可能性もありますので、症状がつらく長引くなど、気になるようであれば医療機関の受診をおすすめします。

口の渇きが喉の渇きに関わるため症状は幅広く、口や喉が異常に渇く、口の中がネバネバする、口臭が気になるなどのほか、しゃべりづらくなった、食べ物が飲み込みづらい、食事が美味しく感じられないなども挙げられます。また、唾液に含まれる免疫作用の低下により、虫歯、歯周病などが悪化することも多いので注意する必要があります。

【対処法】

一番手っ取り早い対処法が水分補給です。喉の渇きを感じたら、こまめに水分補給をしましょう。この時、コーヒーやお茶など利尿作用の強い飲み物だと逆に水分を排泄してしまうので、ミネラルウォーターや経口補水液など水分をしっかり補給できる飲み物を摂りましょう。唾液の分泌を促す食べ物や飲み物を摂ることが大事なので、レモンや梅干しなど酸っぱい食べ物やガムを噛むなども有効です。また、市販のドライマウス用の口腔保湿ジェルやマウスウォッシュ、保湿スプレーを併用するのも効果的です。

その他、日常でできるセルフケアとして、唾液腺を刺激するマッサージや、口の周りや舌を動かすエクササイズを行うのもよいでしょう。さらに、ストレスを溜めないようリラックスする時間をとる、規則正しい生活を心がけるなど、生活習慣を見直すことも大切です。

ドライアイ

ドライアイは、涙の分泌量が不足したり、涙の成分バランスが崩れたりすることで起こります。目が乾くだけではなく、目がかすむ、ゴロゴロする、目が疲れる、目があきにくい、涙が出る、目が赤くなる、目がかゆいなど、さまざまな症状があります。また、近年の研究により、「何となく見えづらい」など視覚機能の異常もきたすことが明らかとなっています。目の乾燥や痛みが強い場合は、他の病気の可能性もありますので、違和感がある時には、受診をおすすめします。

ドライアイが起こる原因は、加齢による目の粘膜の乾燥のほか、環境要因も大きいと考えられています。パソコンやスマートフォンなどを凝視することによってまばたきが減ることや、コンタクトレンズの長時間の装用、冷暖房により室内が乾燥しがちなことも挙げられます。

【対処法】

まずできる対処法は市販の目薬を活用することです。その場合、涙に近い成分で作られた「人工涙液」の目薬を選ぶとよいでしょう。涙の水層の補充を行い、目の表面の涙の量を増加させて潤します。また、ヒアルロン酸製剤など、目に栄養を与える成分や角膜を保護する成分が入っているタイプもおすすめです。目薬に配合されている添加物によっては、かえって目に負担をかけてしまうことがあるので、防腐剤入りや刺激の強いメントール入りの目薬は避けた方が無難です。

点眼のほか、加湿器を使うことも有効です。部屋の湿度を上げたり、乾燥しないように空調を工夫したりしましょう。また、パソコンや携帯を使用しているときは意識的にまばたきの回数を増やす、夜更かしや長時間の使用を避け、マッサージや蒸しタオルをあてて目を休めることなども効果的です。

ドライノーズ

  ドライノーズとは、何らかの要因により鼻内の粘膜が乾燥した状態のことです。鼻の中の加湿機能や繊毛機能が低下し、鼻の粘膜が乾燥状態となり、鼻の中がムズムズしたり、鼻の奥がツンと痛い、鼻が詰まる、鼻血が良く出るなどの症状があらわれます。空気が乾燥する秋冬に発症することが多く、また、エアコンによる空気の乾燥や、薬の影響、ストレスなどが原因でも起こると言われています。

ドライノーズになると、鼻の不快感はもちろんのこと、菌やウイルスへのバリア機能が大きく低下し、鼻炎や感染症リスクが高まる可能性があります。また花粉やPM2.5も体内に入り込みやすくなるため、花粉症や季節性アレルギーを持つ人は、症状が悪化しやすくなるので注意が必要です。

【対処法】

ドライノーズは鼻の中の乾燥によって症状があらわれるため、保湿することで一時的に症状が和らぎます。おすすめは、外出時にマスクを着用すること。吐く息によって鼻腔の保湿・保温ができるため、ドライノーズの症状を緩和することができます。また、加湿器を付ける、鼻の保湿スプレーを使用するなど、こまめな加湿で乾燥対策をすることでドライノーズの症状を緩和できます。

ただし、ドライノーズの症状は花粉症や季節性アレルギーの症状とよく似ているため、ドライノーズなのに花粉症やアレルギーだと勘違いして鼻水を止める点鼻薬などを使用すると、かえって症状が悪化してしまうため注意が必要です。

ドライバジャイナ

  デリケートゾーンと呼ばれる腟周辺の粘膜が乾燥してしまう状態のことです。ヒリヒリとした痛みやかゆみ、ニオイなどの不快症状、また出血、性交時痛を感じることがあります。エストロゲン分泌の減少に伴い、肌の潤いとハリが失われてくように、腟も乾燥して柔軟性が悪く、薄くなります。腟の粘膜や周囲の皮膚も薄くなって萎縮するため、性交痛や性交後出血が起こりやすくなります。

また、腟内は本来弱酸性ですが、エストロゲンが減少すると腟内の酸性度が下がり、細菌に対する抵抗力が落ちてきます。その上、粘膜も薄くなり、傷がつきやすい状態です。その結果、自浄作用が衰え雑菌が繁殖しやすくなることでニオイの原因になったり、細菌に感染しやすくなり、腟炎や膀胱炎になったりする場合もあります。

【対処法】

ドライバジャイナの症状を緩和するには、まず洗い方の見直しです。そもそも、膣内は洗浄してはいけません。膣周囲(会陰部)~小陰唇・大陰唇を洗う場合もデリケートゾーン専用ソープなどで優しく洗浄しましょう。また、専用の保湿ジェルやオイルなどを活用して日常的に保湿ケアを行うことが大切です。なお、膣内は、専用の乳酸入りジェルなどで膣内の酸性度を整えることが有効です。

ドライバジャイナは、重症化するとセルフケアだけでは改善しないこともあります。症状が重い場合はもちろん、症状が軽い段階からクリニックで専門的な治療を受けるのもおすすめです。また、強いかゆみを感じたり、おりものが増えるなどの症状があるときは、感染症の可能性があるため、早めに婦人科を受診しましょう。

一般的なドライバジャイナの治療は、不足した女性ホルモンを補うためのエストロゲンを含む腟剤の使用や内服のホルモン補充療法(HRT)を行います。また、近年では腟壁の新陳代謝を活性化するレーザー治療なども行われています。

当院では、「ピクセルフラクショナルCO2レーザー」を使用した膣レーザーという施術をおすすめしています。女性ホルモンの分泌量が減少するために起こる膣萎縮症や「GSM(閉経関連尿路生殖器症候群)」による症状をレーザー照射により改善させる治療で、外陰部の乾燥やほてり、痒み、黒ずみ、嫌なにおいのおりもの、性交痛に加え、尿漏れや頻尿などの多岐に渡るGMSのつらい不快症状を改善します。GSMは放っておくと徐々に進行する疾患で自然に治るものではないため、深刻になる前に病院で治療を受けることをおすすめします。


ドライシンドロームはプレ更年期からはじまり、更年期を過ぎてからもずっと付き合う可能性が高い症状です。とくに粘膜の乾燥による症状は、年齢を重ねるにつれ、より深刻になる傾向にあります。生活の質(QOL)を向上させるためにも、部位別の主な症状と対策について知り、きちんとケアすることが大切です。