【皮膚科専門医が解説】2024年アトピー治療に待望の新薬「ブイタマークリーム®」が処方スタート。その実力は?
辛い痒みを伴うアトピー性皮膚炎や尋常性乾癬(かんせん)の画期的な新薬として、10月29日に「ブイタマークリーム®」(一般名はタピナロフ)が発売されました。非ステロイド系となるこの新薬は、長期にわたり治療を続けていた方々にとって大きな期待となっています。さっそくその効果や副作用について、詳しく解説します。
- 1.多くの方が悩みを抱える「アトピー性皮膚炎」とは?
- 2.「アトピー性皮膚炎」の治療は?
- 3.「尋常性乾癬(かんせん)」の治療にも高い効果を期待
- 4.皮膚の痒みと炎症を軽減させる「ブイタマークリーム」
- 5.「ブイタマークリーム」の副作用は?
- 6.アトピー性皮膚炎に対する美容医療の進化
目次
1.多くの方が悩みを抱える「アトピー性皮膚炎」とは?
アトピー性皮膚炎とは、強い痒みを伴う湿疹が繰り返し現れる皮膚病のことで、遺伝や体質が関係していると言われています。耳や目の周り、首、ひざ裏などの関節などを中心に症状があらわれ、主に乳幼児に発症し、学童期に軽快していきます。
ところがここ20年ほど、成人後まで症状が続いてしまう患者さんが増え、学業や就労に支障をきたす場合も少なくありません。また、大人になってから痒みや炎症などの症状があらわれるケースも増えていることから、ストレスとの関係性が深いことが分かってきました。罹患率も高く、日本での生涯有病率は15%以上と報告されています。病態としては、1.皮膚バリア障害、2.アレルギー性の炎症、3.かゆみ、の3つが同時に生じています。
2.「アトピー性皮膚炎」の治療は?
治療としては、保湿剤を使用したスキンケアを基本とし、湿疹には症状に合わせたランクのステロイド外用剤やタクロリムス軟膏(プロトピック®軟膏)、デルゴシチニブ軟膏(コレクチム®軟膏)を用います。かゆみが強い場合は抗ヒスタミン薬の内服も併用し、規則正しい生活習慣の指導も行います。アレルギーを併発していればその原因物質を避けます。
ステロイド外用薬は効果実感が高い安全性の高い薬で、医師の指導の下、適切に使用していればさほど心配する必要はありませんが、長期間続けて使用することによる副作用の可能性があります。具体的には、個人差はありますが、皮膚が薄くなる、毛細血管拡張、局所の感染をしやすくなることなどが挙げられます。そのような不安を抱える方にとって非ステロイドである「ブイタマークリーム®」は、とても期待がもてる薬だと言って良いでしょう。
3.「尋常性乾癬(かんせん)」の治療にも高い効果を期待
尋常性乾癬(かんせん)とは、皮膚の角化異常を生じる皮膚病で、特徴的な銀白色の鱗屑(皮膚の粉)を付着し、境界明瞭な盛り上がった紅斑と呼ばれる大小さまざまな紅い発疹が全身に出る皮膚疾患です。ひざやひじ、頭髪の生え際、腰などこすれる場所に出やすく、半数程度で痒みを伴います。青壮年期に発症することが多く、爪の変形や関節炎を伴うこともあります。発症のきっかけは、風邪などの感染症、こするなどの機械的刺激、特殊な薬剤、ストレスなどが挙げられます。
尋常性乾癬の基本治療は、1.外用療法(ステロイド軟膏、ビタミンD3軟膏など)、2.内服療法(レチノイド、シクロスポリン、メトトレキサート、アプレミラストなど)、3.紫外線療法(ナローバンドUVB、ターゲット型エキシマライト)です。まずは外用治療から開始します。これらの治療に抵抗性の場合や副作用のために内服薬が使用できない場合などに、乾癬発症の原因となるサイトカインを抑制する生物学的製剤の注射療法を行います。現在11種類の薬があり、インフリキシマブのみ点滴注射薬で他は皮下注射します。生物学的製剤の登場で、尋常性乾癬、関節症性乾癬の治療は大きく変わりました。
尋常性乾癬の治療外用薬としてはステロイド外用薬やビタミンD3軟膏がありますが、副作用に注意する必要がありました。「ブイタマークリーム」は、尋常性乾癬の治療にも有効な非ステロイド系の外用薬となるため、乾癬による長期的な痒みなどに悩んでいた方にとっても、嬉しいニュースとなり得るでしょう。副作用の頻度は低く、局所の毛嚢炎やニキビ、接触性皮膚炎などがあります。
4.皮膚の痒みと炎症を軽減させる「ブイタマークリーム」
では「ブイタマークリーム®」は具体的に、どのような効果が期待できるのでしょうか?簡単にご説明すると、皮膚の炎症を抑える働きをする「アリールハイドロカーボン受容体(AhR)」を活性化し、種々の遺伝子発現を調整します。具体的には、炎症性サイトカインを低下させる、抗酸化分子の発現を誘導することで皮膚の炎症を抑えたり、フィラグリンやインボルクリンの発現を誘導し皮膚のバリア機能を高めたりしてくれたりします。さらに、神経反発因子SEMA3Aの発現を誘導しかゆみを感じる神経の伸長を抑えます。その結果、皮膚の痒みや湿疹が改善され、アトピー性皮膚炎や尋常性乾癬の症状が軽くなるというわけです。実際アメリカで行われた臨床試験で「乾癬の患者さんでは塗るだけで大幅に症状が改善した」という結果が出ていることから、日本でも期待の声が高まっています。
ブイタマークリームはさらに皮膚の保湿因子を増やす作用があり、乾燥によるバリア機能改善にも役立ちます。軟膏ではなくクリームタイプなので伸びがよく、塗りやすいのも特徴です。1日1回の外用で済むので、忙しい方でも取り入れやすいところもメリットです。アトピー性皮膚炎では12歳以上から、尋常性乾癬では15歳以上からの使用が可能です。
【適応】
アトピー性皮膚炎 成人及び12歳以上の小児 1日1回外用
尋常性乾癬 成人 1日1回外用
5.「ブイタマークリーム」の副作用は?
長期に悩む患者が多いアトピー性皮膚炎や乾癬では、薬の副作用が気になりますよね。このブイタマークリームはステロイドを使用していないので、長期使用による深刻な副作用は比較的少ないとされています。挙げられている副作用としては、毛嚢炎、ニキビ、かぶれ、などとなっていますが、大部分は軽度から中等度で、重篤な副作用は報告されていません。このことからも、今まで長期的な治療が必要だった患者さんや、ステロイドの長期使用に懸念があった患者さんに対して、新たな治療の選択肢となるでしょう。
6.アトピー性皮膚炎に対する美容医療の進化
アトピー性皮膚炎の炎症を繰り返すうちに症状が悪化し、衣服や髪の毛が触れただけといった少しの刺激で痒くなってしまうことがあります。さらには炎症による色素沈着が生じて肌が黒ずんだり、ステロイドの外用の影響で皮膚が萎縮したり赤ら顔が生じてしまったりします。繰り返す炎症によりシワが早くから現れ、深く刻まれてしまうこともあります。このように、皮膚炎が出なくなった後も抱えている肌悩みを、美容皮膚科の施術でかなり解決できるようになりました。そこで当院で施術可能な治療を、症状別にご紹介します。
黒ずみやダーティネックには「ピコフラクショナル」
慢性的に炎症を繰り返すことにより、時間が経っても消えない色素沈着(黒ずみ)が残ってしまいます。これは、炎症によって基底膜の結合が弱まり、もともとは表皮内にのみ存在するメラニンが真皮内に滴落し、刺青(Tatoo)のように消えない黒ずみとなります。
さざ波のような黒ずみが首や鎖骨の上などに見られることから「ダーティネック」や「ダーティスキン」などと呼ばれます。治療としては、刺青同様ピコレーザーが効果的です。
高いブライトニング効果のあるピコレーザー照射治療で色素沈着を改善しながら、同時に衝撃波の作用でコラーゲンも増生されるので、肌のキメやハリが高まります。ピコトーニング照射と同時にピコフラクショナル照射を重ねて行う『ピコトーニング&フラクショナルW照射』がおすすめです。
アトピー性皮膚炎 ダーティネック・ダーティスキン専用
ピコトーニング照射×ピコフラクショナルW照射
施術の一例:首~鎖骨下¥38,000(初回トライアル)
痒みや赤ら顔には「フォトフェイシャルM22」
アトピー性皮膚炎の炎症を繰り返すうちに、衣服や髪の毛が触れるといった些細な刺激で痒くなってしまいます。本来は真皮内にのみ存在する感覚神経のC線維が表皮内に伸長してしまうことが原因と言われています。また、ステロイド外用剤の長期使用で、皮膚萎縮(皮膚が薄くなる)や毛細血管拡張(赤ら顔)を生じることがあります。そのような肌状態には、幅広い波長域を持つ光(IPL)を照射することで過剰な血管や表皮内に伸びてきた異常な感覚神経の枝をを安全に破壊し、萎縮したコラーゲンを再生させる治療が適しています。そのほかシミやくすみ、色ムラ、毛穴目立ちなど様々な大人の肌トラブルに効果的な治療です。
フォトフェイシャルM22(光治療・IPL)
施術の一例:顔全体¥33,000(初回トライアル)
乾燥や皮膚萎縮には「水光注射」
アトピー性皮膚炎の方は自前の保湿成分(セラミドなど)が先天的に不足しているため、乾燥しやすく、バリア機能が弱まっている状態です。またステロイド外用剤の長期使用で、皮膚萎縮(皮膚が薄くなる)が生じていることもあります。スタンプ式の自動注射で美肌・再生効果の高い薬剤を真皮内にダイレクトに注入できる「水光注射」で、肌質を改善することがおすすめです。皮膚萎縮でゴワついた肌質の改善にも効果的です。
極水光(潤いアップ)3ml
非架橋ヒアルロン酸2ml+極上美肌メソカクテル1ml¥48,000(初回トライアル)
アトピー性皮膚炎や乾癬による痒みや炎症は新しいブイタマークリームで軽減しつつ、できてしまった黒ずみや皮膚萎縮などは美容医療で回復させ、より美しい肌を目指しましょう。