【皮膚科専門医が解説】SNSで話題の「酸化亜鉛は肌に良くない」の真相は?
「毛穴を詰まらせる」「ニキビや肌荒れの原因になる」「金属アレルギーになる」etc. 近年、SNSを賑わせている「酸化亜鉛は肌に悪い」という噂。事実、「酸化亜鉛フリー」をウリにした日焼け止めが発売されているほど。とはいえ、安全という話も聞くし、実際のところ、どうなのでしょうか。そこで今回は、酸化亜鉛にまつわる噂の真偽について詳しく解説していきます。
1.今話題の「酸化亜鉛」とは
酸化亜鉛はミネラルの一種で、亜鉛を酸化させてからコーティングした粒子の細かい白いパウダーです。化粧品や医薬品、塗料、乾燥剤など様々な用途に使われており、なかでも化粧品の原料としての歴史は古く、100年以上前から白粉として使われていたそう。
酸化亜鉛が化粧品に配合される理由や目的は、以下のようなものがあります。
■ 紫外線を反射・散乱させる(紫外線防御効果)
■ 皮脂崩れやテカリを防ぐ(皮脂吸着効果)
■ 毛穴を引き締め、皮脂分泌を抑制(収斂作用)
■ 抗炎症作用(肌荒れ防止効果)
酸化亜鉛には高い屈折率で紫外線を散乱させる効果や、皮脂を吸着し化粧崩れを防ぐ効果があります。また、抗炎症剤としての効果も期待できます。そのため、日焼け止めをはじめ、下地やファンデーション、乳液やクリーム、ボディパウダー、制汗剤など、さまざまな化粧品に使われています。
2. 酸化亜鉛を使用した日焼止めが多い理由
紫外線カット成分には、主に紫外線吸収剤と紫外線散乱剤があり、酸化亜鉛は後者です。紫外線を反射・散乱させることによる高い紫外線防御効果があるため、紫外線吸収剤を使っていない"ノンケミカル"といわれる日焼け止めに用いられていることが多いのが特徴です。対応波長が幅広いため、UV-Bはもちろん、波長が長く光老化の原因となるUV-Aの防御性能が高く、酸化ストレスを誘導するブルーライトまでしっかりブロック。さらに、肌への負担が少ないことも大きな魅力です。紫外線カット成分として非常に優秀なため、日焼け止めなどに長年使われています。
酸化亜鉛は高い光反射性と均等な散乱効果をもつため白色をしており、白色の粉末顔料として広く普及しています。そのため、以前は日焼け止めなどに配合すると白浮きしやすかったり、きしみ感が出たりするという欠点がありました。しかし、最近は透明性や使用感の向上のために微粒子化されていたり、配合量や顔料との組み合わせ、コーティングなどさまざまな工夫がされていたりして、白くならない自然な仕上がりのものが増えています。
3.「酸化亜鉛は肌に悪い」というのは本当?
酸化亜鉛は、安全性に問題のある成分ではありません。『日本薬局方』『食品安全委員会』など、公的な機関から毒性が低く、肌への刺激やアレルギーの心配がほとんどないという報告がされています。とはいえ、「酸化亜鉛は肌に悪い」という噂が跡を絶ちません。そこで、SNS等でよく見かける、以下の3つの噂の真相について解説します。
噂1 酸化亜鉛は毛穴詰まりを招く
酸化亜鉛には、皮脂と結合して吸着する作用があります。そのため、「吸着された皮脂が毛穴の中で固まり、毛穴を塞ぐのでは?」 と懸念することが起因ではないかと考えられます。
確かに皮脂を固める作用はありますが、粉体の酸化亜鉛と液状の皮脂が混ざるとドロッとしたペースト状になる程度で、毛穴を塞いでしまうような硬さはありません。正しいクレンジングや洗顔をしていればキレイに落ちるため、基本的に毛穴を詰まらせる可能性は低いと言えます。むしろ皮脂吸着作用によって皮脂の酸化が抑制されるため、酸化ストレスにより毛穴の入り口の角層が厚くなって生じる毛穴詰まりを防ぐ効果が期待できます。
噂2 ニキビや肌荒れの原因になる
日焼け止めやベースメイクに配合されている酸化亜鉛は、「汗や皮脂への耐久性」「肌なじみの良さ」などを求めるため、シリコン処理や撥水成分がコーティングされています。そのため、コーティング剤によってはクレンジングや洗顔で落ちにくいことも。きちんと落としきれていないと、汚れが蓄積されることで毛穴詰まりを起こすこともありますが、それは酸化亜鉛だけが原因ではありません。
毛穴が詰まってしまうと、角栓が酸化して黒ずんだり、アクネ菌が増殖することでニキビが引き起こされることがあります。「石けんで落とせる」のか「クレンジングが必要」なのか、クレンジング剤の選び方や使用量、使い方などが誤っているために、"正しく落とせていない"場合もあるので、化粧品メーカーの記載を守って洗うようにしましょう。肌に優しいからといって弱すぎるクレンジング料をしようしていると毛穴が詰まる可能鵜性があります。
噂3 金属アレルギーのリスクがある
「金属アレルギーの人は、酸化亜鉛の化粧品は避けるべき?」など、酸化亜鉛によるアレルギー反応を心配する声も聞きます。金属アレルギー原因となるのはニッケルやクロムが多く、一般的に酸化亜鉛は金属アレルギーを引き起こすリスクは低いと言われています。
化粧品に配合されている酸化亜鉛は、表面にコーティング処理されているため、肌に直接触れるものではありません。また、事前に十分な安全性チェックも行われています。とはいえ、"亜鉛アレルギー"を持つ人は稀に存在しますし、何かが引き金となって将来的にアレルギーを発症する可能性もゼロではありません。心配な人は、パッチテストを行い、アレルギー反応が出ないことを確かめてから取り入れましょう。
酸化亜鉛は肌に直接悪影響を及ぼすリスクはないと考えられており、安全性が高く、デメリットのない優れた成分です。適切なクレンジングや洗顔をしていれば、毛穴が詰まることもありません。長く使われている成分は、機能面や安全性など長く使われ続けるだけの理由があるため、根拠のない噂に惑わされないよう、注意してくださいね。