院内処方外用薬・内服薬の効果と特徴
シミ内服療法
シミの治療はレーザーや光治療、ケミカルピーリングを用いますが、施術の効果を長続きさせるために、シミ内服薬の併用は重要です。内服療法のメリットは、副作用がほとんどなく、簡単にご自宅でしみの予防と治療ができる点です。当院のしみ内服薬の成分は、シミ全般に効果のあるビタミンCや、肝斑の特効薬であるトラネキサム酸、ビタミンCとの併用で相乗効果のあるビタミンE、L-システインの4種類を基本としています。医療機関専用処方の美白外用剤との併用がおすすめです。
ビタミンCビタミンCは、コラーゲン線維を合成する時に必要な補酵素として働き、弾力とハリのある美肌作りには必要不可欠な成分です。また、ビタミンCは、その強い抗酸化力により活性酸素の働きを抑え、細胞や組織を守り老化を防止します。皮膚に、紫外線があたると、チロシンがチロシナーゼという酵素の働きによってメラニン色素に変わり、しみ・そばかすの原因となります。ビタミンCは、このチロシナーゼの働きを阻害することで、しみを防ぎます。
トラネキサム酸人工的に合成されたアミノ酸製剤で、医療的にはマイルドな止血薬、抗炎症薬として古くから用いられています。紫外線や物理的・精神的ストレスによる刺激で活性酸素を発生すると、メラノサイト活性因子が産生され、そのシグナルがメラノサイトに伝えられて、メラニンが過剰に作られることがシミの原因と言われています。トラネキサム酸は初期の段階でメラノサイト活性因子の一つであるプラスミンを阻害し(抗プラスミン作用)、メラニンを作らせる情報伝達をブロックします。このように抗プラスミン作用による美白効果があるため、皮膚科では肝斑や日光性色素班(老人性色素斑)、炎症後色素沈着の治療に欠かすことのできない薬となっています。
L-システイン
皮膚の代謝や、肝臓の解毒作用に関与し、メラニン色素の生成を抑え、メラニンを無色化するとともに肌のターンオーバーを促し、新しい細胞への生まれ変わりを助けます。しみのメカニズムとして、紫外線などの刺激により、メラノサイト内にある無色のチロシンが酸化酵素のチロシナーゼによって化学反応を起こし、徐々に黒色化することで黒色メラニン(ユーメラニン)が合成されます。L-システインはチロシナーゼの活性を抑えることで、メラノサイト内でのメラニンの生成を抑制します。また、無色のチロシンが黒色メラニンへと合成されるのを阻害し、黒色メラニンをドーパキノンに還元して無色化します。さらに肌の代謝を促し、ターンオーバーを正常化することで、既にできてしまったシミ、くすみ、にきび跡の色素沈着などを軽減します。また、抗酸化作用や体内のコラーゲン線維を生成する効果があり、肌の弾力を高めて老化防止にも役立ちます。
ビタミンE
ビタミンEは強い抗酸化作用を持つ脂溶性ビタミンの一つで、体内で発生する活性酸素から、体を守り老化を防ぎます。また、悪玉コレステロールを減らし、善玉コレステロールを増やすことでコレステロールを減少させるなど生活習慣病の予防にも効果があり、「サビ止めのビタミン」「若返りのビタミン」とも言われています。ビタミンEは高い活性酸素除去力(抗酸化力)により、シミ、くすみ、そばかすを出来にくくする効果があります。ビタミンEはビタミンCと一緒に摂ることにより、相乗効果で強い抗酸化作用を発揮します。ビタミンEの末梢循環改善効果で肌の代謝が整い、メラニン色素を多く含んだ古い角質がスムースに脱落し、シミを薄くしていきます。女性の冷え性対策にも必要な成分と言えます。
ニキビ内服外用療法
ニキビは様々な症状が混在した皮膚病です。まず、毛穴の入口(毛ろう斗部)の過角化がきっかけとなり、皮脂の貯留とアクネ桿菌による刺激性物質への変化が始まります。次いで炎症の発生により赤ニキビとなり、さらに、好中球の遊走により膿疱が出現します。進行すると毛包の破壊から、瘢痕形成(ニキビ跡)や、炎症後の色素沈着(シミ・黒ずみ)を生じます。ニキビ治療には、ニキビを出来にくくし、炎症を速やかに抑える成分を用います。炎症後の赤みや黒ずみ(色素沈着)を早く消退させる成分や美白剤の外用も欠かせません。抗生剤をできるだけ内服しなくても済むようにケミカルピーリングや光治療を併用していくことをおすすめします。
ビタミンCビタミンCは、抗酸化ビタミンとも呼ばれ、ニキビの炎症で生じる、黒ずみ(色素沈着)を予防します。また、ビタミンCは、体を構成する重要なタンパク質の一つであるコラーゲン線維を合成する時に必要な補酵素として働くので、激しい炎症を起こしたニキビがクレーター状、アイスピック状に凹む(ニキビ跡)のを防ぎます。
ビタミンB₂ビタミンB₂ は、皮膚や各器官の粘膜を正常に保ち健康な肌や髪、爪を作り成長を促します。エネルギー源(糖質・脂質・たんぱく質)の代謝に補酵素として、特に脂質の代謝に深く関わるためダイエットの際にも欠かせない栄養素です。また、老化を促進させる過酸化脂質の分解を促進し、生活習慣病の予防・改善に役立ちます。ビタミンB₂が不足すると、脂質の代謝が滞り、皮膚の場合は、脂性肌、ニキビ、脂漏性皮膚炎などの症状が現れ、舌炎や口唇炎、口角炎など粘膜のトラブルも生じやすくなります。
ビタミンB6
ビタミンB₆はビタミンB₂と同様にたんぱく質の分解(代謝)や結合に関わる酵素の働きを助け、皮膚や粘膜の健康維持に働きます。また、神経伝達物質や病原菌と闘う抗体などの合成にも関わっています。さらに、ビタミンB₆は、脂質を効率よく分解させることで、過剰な皮脂が一つの原因である脂漏性皮膚炎やニキビを改善します。脂肪やたんぱく質を分解してエネルギーに変えてくれるので、体に余分な脂肪もつき難くなるとも言われています。
ニキビ用抗生剤内服薬
持続型マクロライド系抗生物質製剤。静菌作用でアクネ桿菌の増殖を防ぎニキビをできにくくします。 また毛包への好中球の遊走を抑えるとでニキビの炎症や化膿を抑えます。
ニキビ用抗生剤外用剤
リンコマイシン系外用抗生物質製剤。ニキビを悪化させるアクネ桿菌やブドウ球菌などの細菌を殺菌し、炎症を抑制します。
院内処方外用薬・内服薬の持続と頻度
処方時に、薬剤ごとに指示された通りに少量の水で服用して下さい。美白やニキビ改善効果を得るためには最低でも1ヶ月間の服用をお勧めします(抗生剤内服を除く)。効果を持続し、美しい肌を保つためには6ヶ月以上の長期服用を定期的に行うのがよいでしょう。これまで副作用の報告は少なく、安全性の高い薬ですが内服中に何らかの副反応が出た場合は中止して主治医にご相談ください。ニキビ用抗生剤外用剤は炎症性ニキビ(赤ニキビ・膿ニキビ)に1日2回塗ってください。
院内処方外用薬・内服薬の禁忌事項
各種薬剤に過敏症のある方は服用いただけません。持病や常用薬がある方はお申し出下さい。妊娠中は、妊娠後期に入ってから一部服用できるものもあります。詳しくは医師にご相談ください。