『唇のヒアルロン酸注入』というと、若い人が受ける施術というイメージを持つ方が多いようですが、唇は、加齢による変化が現れやすいパーツなので、年齢を重ねた方のエイジングケアとしてもおすすめです。
老化による唇の変化
・ボリュームが減少・小さくなったように感じる
・唇の縦ジワが目立つ
・唇の色味が悪い
・唇の輪郭がぼやけている
・上唇の2つの山が平坦化している
・口角が下がっている
・唇周りに小ジワができている
・人中陵(鼻の下と上唇をつなぐ2本線)が平坦化している
・人中が長い(鼻の下が長い)
唇のヒアルロン酸注入の効果
ボリュームを出し輪郭を際立たせる
もともと唇が薄い、加齢により萎んでハリが失われた唇に、自然なボリュームを与えることができます。輪郭がはっきりするので、唇の華やかさが増します。ボリュームが欲しい方は、下唇の中央に少し追加するとぽってりとした唇に近づけます。さらに、上唇のバーミリオンボーダー(唇の赤い部分と肌色の部分の境目の部分)に注入すると、縁が外向きにめくれたようになり、若々しさや可愛らしさが増します。また、上下アンバランスな唇や、左右非対称な唇の形を整えることも可能です。理想的な唇の厚みは上唇が8mm、下唇が10mmと言われますが、顔全体のバランスやご本人の好みも重要です。
【唇が美しく見える黄金比】
顔全体のバランスを決める美の基準に‟黄金比"があります。黄金比とは、誰が見ても「美しい」「魅力的」と直感的に感じる比率のことです。実は唇にも黄金比があります。
唇の厚み ➡ 上唇(1):下唇(1.3~1.5) アジア人の場合1:1くらいでも良い唇の幅 ➡ 縦幅(1):横幅(3)
さらに、口元は横顔の美しさとも関係しています。女性誌などでも取り上げられる横顔の美しさの基準に『Eライン(エステティックライン)』があります。横顔の鼻先とあごの先端を結んだ直線のことで、アジア人では、このEライン上に唇が触れるか、やや内側にあるのが理想的だと言われています。さらにこだわると、上唇が下唇よりも1~2mm突出しているのが理想的なプロポーションとされています。
唇の縦ジワ・乾燥・色調を改善する
痩せて萎んだ唇を内側からふっくら持ち上げてシワを目立たなくさせます。また、ヒアルロン酸の保水効果で乾燥が改善され、色調も明るく、自然な血色になり、リップメイクがぐっと映えるようになります。
上唇の山(キューピッドボウ)はっきりさせる
キューピッドボウは、上唇の中心にあるM字型の山のことで、天使の持つ弓の形に似ていることからそのように呼ばれています。年齢とともに、唇のボリュームが落ちて上唇が内側に入り込んでくると、キューピッドボウも平らになり、人中(鼻の下から上唇まで)がのびて、間延びしたような顔になってきます。平坦な唇の山をはっきり見せることで、顔に立体感を与え、若々しい印象へと導きます。唇の山の角度は10~15度で、鼻孔(鼻の穴)の中心からおろしたところに上唇の山があることが理想とされています。
口角を上げる・アヒル口にする
上唇の両サイドのバーミリオンボーダー(唇の赤い部分と肌色の部分の境目の部分)に注入することで、上唇の外側が少しめくれ、口角の内側の部分が中に入り込みます。口角の位置自体は下がりませんが、口角のやや内側の唇がほんの少し下がると、相対的に口角が上がったような印象になります。真顔の時でも、口角が上がっているだけで、ポジティブで凛とした印象を与えます。ヒアルロン酸注入のみでも口角を上げることは可能ですが、口元の筋肉(口輪筋)の状態によっては、『ボトックス注射』との組み合わせが望ましい場合もあります。
また、若い方からの支持率が高いのが『アヒル口』です。キュッと上がった口角にふっくらと唇を突き出したようなアヒル口は、キュートでいてセクシーな印象も与えます。唇全体にボリュームを出して厚くするのではなく、キューピッドボウと呼ばれる上唇の2つの山の部分のエッジを立てるように注入しながら、上唇の際に沿って全周に少量ずつ注入していくと、前に突き出たアヒル口を作ることができます。その後、上唇とのバランスを見て下唇にも注入します。
視覚的に人中を短く見せる
人中は、鼻の下から上唇まで伸びる溝のことです。人中が短い程、若々しく愛らしい印象になるので、メイクで人中を短く見せる「人中短縮メイク」がメディアで紹介されたりしています。顔のバランスをよく見せるには、人中(鼻下~上口唇)と、あごの長さ(下口唇~顎下)までの比率が「1:2」であると言われています。鼻の下が長いと、お顔が小さくても面長に見えたり、老けて見られたりする可能性があります。また、加齢とともに唇のボリュームが落ちて、上唇が内側に入り込んでくると、鼻の下が間延びして、のっぺりとした印象に見られがちです。外科的手術での人中短縮術が一般的ですが、ダウンタイムや小鼻周りの傷跡が目立つなどのリスクが上げられます。一方、ヒアルロン酸注入では、上唇に厚みを与えることで、唇が少しめくれて上向きになるので、視覚的に鼻と唇の間が短くみえる効果が期待できます。また、上唇を下唇よりやや前に出すと、理想的な横顔の条件とされるEラインに近づきます。
口周囲のシワを改善する
無表情でいる時も、唇をすぼめた時のように、上唇の上に縦にのびる何本かのシワ(スモーカーズライン)は、お年寄りのお顔をイラストにしたときに特徴的に書かれています。唇のヒアルロン酸注入で、輪郭を整え、ふっくら若返ると、二次的効果で唇周囲のシワも軽減します。ただし、しっかり刻まれてしまっている場合は、口周囲にも、直接柔らかなヒアルロン酸を薄く広範囲に注入することで、皮膚に厚みとハリを出し、シワを浅くすることが可能です。
ガルデルマ社 ヒアルロン酸注入トレーナー医師
当院の慶田院長は、厚生労働省認可のヒアルロン酸製剤『レスチレン』を販売する製薬会社ガルデルマ社の認定するトレーナー医師です。日本国内の美容医療分野でエキスパートとして活躍し、ガルデルマ製品に関する深い知識と高度な注入スキルを持っている医師がガルデルマファカルティメンバーであり、GAIN※(ガルデルマ社が世界規模で提供する医師向け美容医療教育システム)をはじめとする医師向け研修を提供しています。注入治療に関わる医師への技術指導や安全教育、トレーニングマニュアルの作成や指標づくりなどに関わることで、日本国内でヒアルロン酸注入に関わる医師の技術向上と、不幸な事故ゼロを目指しています。さらに2022年から、慶田院長はGalderma JPAC Faculty Member※(ガルデルマJPACファカルティメンバー)にも選出され、海外のドクターとの情報交換や会議を通じて国内のみならず、アジアパシフィック地域における美容医療界の発展にも貢献しています。
※GAIN (Galderma Aesthetic Injector Network:ゲイン)
ガルデルマ・エステティック・インジェクション・ネットワークは、ガルデルマ社のレスチレン注入剤などに関するトレーニングを提供する医師向けの美容医療教育システムで、美容医療界のリーダーである全世界のファカルティメンバーが支えている。患者様のニーズに基づいた治療を提供するため、正しい製品知識や臨床科学に基づいた教育研修の徹底により、医師の技術や施術結果の向上を図り、安全性の追求を通じて患者様の満足度をあげることを目標にしている。
※Galderma JPAC Faculty Member
ガルデルマJPACファカルティメンバーとは、各国のファカルティメンバーからガルデルマ社が2~3人を選出した医師陣で、国内にとどまらず、アジアパシフィック地域における美容医療界の発展に貢献している。
顔面解剖学マスタークラス履修
私たちは定期的に受講と実習を繰り返し、患者様の安全のために身を引き締めて診療にあたっております。
【慶田院長】
・2015年4月25~26日に韓国で開催された、ヒアルロン酸フィラー注入経験豊富な医師のための『顔面解剖学マスタークラス』で、講義と実習を受けました。日本国内では法律上叶わない、冷凍保存のご遺体での実習はその後の注入治療の糧となっています。
・2016年10月15日に日本で開催された『GALAA』にて、顔面解剖学をスライド講義と3D動画で深く学びました。
・2017年10月22日に日本で開催された『アラガン社のセミナー』で、解剖とヒアルロン酸注入の実技を学びました。
・2018年3月24~25日にタイで開催された『顔面解剖学マスタークラス』で、講義と実習を受けました。注入治療を熟知した解剖学の教授が、顔面の美容医療に関わる医師向けに作成した動画やスライドは何度見ても勉強になります。
・2019年~Sim HOLLYという3D解剖トレーニングソフトにて定期的に解剖学を復習しつつ、院内の医師に技術指導を行っています。
【服部医師】
・2017年10月22日に日本で開催された『アラガン社のセミナー』で、解剖とヒアルロン酸注入の実技を学びました。
ヒアルロン酸注入(唇形成)に使用する製剤
ヒアルロン酸製剤には、様々なブランドや種類が存在します。現在、当院では品質と安全性の高さを最優先し、有架橋のヒアルロン酸フィラー製剤はGALDERMA社(ガルデルマ社)とMERZ社(メルツ社)を、浅いシワに用いる非架橋のヒアルロン酸製剤はTEOXAN(テオキサン社)の製剤を取り扱っています。多彩なラインナップから、シワ、たるみ、凹みの状態、肌年齢、注入部位に最適な製剤を担当医が選んで治療を行っています。
メルツ社の『ベロテロシリーズ』
●FDA(米国の厚労省に相当するもの)の承認を取得(2014年)
ドイツのMERZ(メルツ)社とスイスのANTEIS(アンティース)社が合併したことを機に、製品名が『エセリス』から『ベロテロ』に名称変更され、パッケージも変わりました。製剤の特性はそのままに、FDA(米国食品医薬品局)の承認も取得して、安全性への裏付けが強固になりました。『ベロテロシリーズ』は、他のヒアルロン酸製剤と比べて微粒子のない滑らかな製剤です。pH(酸性度)と浸透圧が皮膚に近く、注入時の痛みが少ない点も優れています。非常に馴染みやすく、皮膚の薄い部位でも凹凸や、チンダル現象(ヒアルロン酸製剤が青く透けてしまう現象)を起こしにくい製剤のため、より自然な仕上がりが期待できます。仕上がりのお好みによっても変えますが、唇には『ベロテロ インテンス』と『ベロテロ バランス』を使用します。
『ベロテロ インテンス』
➡全体のボリューム補充・唇のエッジを際立たせる・口角挙上・アヒル口形成・人中部を短く見せる
適度なボリューム感と、持ちの良さが特徴です。ふっくらとしたボリュームを出すだけでなく、リフト力があるので、輪郭やキューピッドボウの形成にも適しています。
『ベロテロバランス』
➡自然仕上がりがお好みの方・既に唇のヒアルロン酸注入をされている方のタッチアップ
馴染みやすく、皮膚の薄い部位でも凹凸にならないため、より自然な仕上がりが期待できます。ボリュームアップの効果はやや弱いので、ナチュラルな仕上がりを求められる方、既に唇のヒアルロン酸注入を受けられている方のタッチアップにおすすめです。
※ベロテロシリーズは安全性試験を実施し、米国FDA(Belotero Balance:08-977 Belotero Lido (Belotero Soft lido, Belotero intense lido, Belotero volume lido) 16-31 Belotero balance lido:17-546)の承認を受けております
ヒアルロン酸注入(唇形成)の痛み
表面麻酔のクリームを使用し、十分に冷却した上で、両口角横に局所麻酔の注射をしてから、先端の丸いロングソフトカニューラ針でゆっくりと注入し、痛みを軽減させています。しかしながら、唇は感覚神経が集まっている部位なので、シワ治療など他部位へのヒアルロン酸注入と比較して少々強く感じます。痛みを感じるのは、治療中の5分程度だけですので、ほとんど全ての方がご辛抱頂ける程度です。注入後は麻酔と注入の刺激で腫れぼったい感じがしますが、数時間後には気にならなくなります。
ヒアルロン酸注入(唇形成)のリスクとダウンタイム
<痛み>注入時のみやや強い <腫れ> 少し(個人差あり) <内出血> ほとんど無し
唇に外用麻酔を塗ると5分ほどでしびれてきます。冷却後、両口角横に局所麻酔の注射をしてから、先端の丸いロングソフトカニューラ針で慎重に注入します。注入による内出血のリスクは少なく、出たとしても口角に小さく青くなるだけで目立ちません。また、ヒアルロン酸は高保水成分のため、注入後1カ月程度水分を吸収して浮腫む経過が必発です。そのため、初回の注入量は1.0~1.5ml程度の少量で留めます。水分が再吸収されると少し物足りなくなる場合も多いので、1~2か月後にタッチアップすると効果の持続期間が延長します。
メイクは針孔を避けて頂ければ、直後から可能です。また洗顔、軽い入浴、食事、接触も当日から制限はありません。飲酒、サウナ、長風呂、激しい運動は内出血のリスクを高めるので、当日のみお避け下さい。医師が施術直後にマッサージをしてなじませますが、特に医師の指示がない限り定着するまでの約1か月程度、マッサージは控えてください。。
医師が施術直後にマッサージをしてなじませますが、特に医師の指示がない限り定着するまでの約1か月程度、マッサージは控えてください。唇へのヒアルロン酸注入は特に、デザイン力と繊細な注入が重要です。滑らかで、高品質な製剤を使用しないと、ゴツゴツした感触になることもあります。また、血管の走行など解剖学的知識が少ないと、頻度は少ないものの、塞栓や壊死の報告があります。銀座ケイスキンクリニックでは、定期的に勉強会を開催し、常にリスクを避けるべく、最善の治療を心掛けています。
ヒアルロン酸注入(唇形成)の持続と頻度について
効果は注入直後から鏡でご確認いただくことが出来ます。注入したヒアルロン酸は代謝・分解されてしまうことから、持続期間は約1年~1年半ですが、減りきる前にタッチアップをしたり、繰り返し治療したりすると、効果の持続期間は延長します。
ヒアルロン酸注入(唇形成)の禁忌事項について
ヒアルロン酸自体は体内にも存在する成分なので、アレルギーの心配はありません。また、注入された純粋なヒアルロン酸は水に分解されて100%体内で吸収されます。真性ケロイドの方など、異物反応を生じやすい体質の方はヒアルロン酸が馴染まず、シコリのようになる人がいます。ヒアルロン酸は体内にある成分なので副作用が起きることはまれですが、約数千人に1人の割合で架橋剤などの添加成分にアレルギーを起こす人もいるので過去にトラブルのご経験がある場合などは事前にご相談下さい。
●下記に該当される方は、この治療を受けられないことがあるのでご相談ください。
・過去にヒアルロン酸注入治療で異常反応があった方
・妊娠中の女性
・真性ケロイドの方、異物反応を生じやすい体質の方
・コントロール不良の糖尿病、急性感染症、膠原病、精神疾患
・注入希望部位に未治療の感染症や皮膚疾患がある方
*安全のため、他院での美容医療の治療歴を担当者にお伝えください。
*麻酔薬や内服薬に対してアレルギーのある方、喘息の既往がある方は事前にお申し出下さい。但し、今までにそのような経験がなくても、麻酔薬に対するアナフィラキシーショック(呼吸が苦しくなる、血圧が下がるなど)を生じることは極めてまれに起こりえます。その場合は、速やかに適切な処置を致します。
*麻酔薬にアレルギーがある方には麻酔薬を含まない製剤を取り寄せて注入いたします。製剤のラインナップが少ないため、適応等は診察してからお診立てします。