『シルファームX』による肝斑治療
●肝斑とは
肝斑は、主に30~50代の女性に見られる後天性の色素斑(シミ)で、下眼瞼を避けて頬、こめかみ、鼻の下、顎などに左右対称に生じます。淡~濃褐色の色素斑が、境がはっきりしないぼやけた形で広がるため、一見くすんでいて顔色が悪いような印象にも見えます。実際には老人性色素斑やADM(後天性真皮メラノサイトーシス)と混在していることも多く、治療法が異なるので、専門医による診断を受け、適切な治療を受けることが大切です。
●肝斑の原因(増悪因子)と発症のメカニズム
肝斑は、表皮基底層にあるメラノサイト(メラニン色素を作る細胞)の活動性が活発になり、メラニン色素が過剰に生成され、表皮に色素沈着が起こった状態と言われています。原因に関しては完全には解明されていませんが、以下のような多くの経路を介してメラノサイトが刺激されていると考えられています
・紫外線
・女性ホルモンの変動(妊娠中や出産期、ピルの内服、不規則な生活習慣やストレス)
・摩擦刺激によるバリア機能の破壊 (洗顔やスキンケア、メイクなど)
・乾燥や肌荒れなど皮膚の炎症
・遺伝的素因
肝斑は表皮内のメラニン沈着が主体ですが、近年の研究では、表皮の下にある
「真皮」の関与も示唆されています。
紫外線(光老化)や加齢により真皮層の炎症や劣化が進むと、真皮線維芽細胞由来のサイトカインや血管内皮増殖因子(VEGF-A)が増えて、真皮内の「毛細血管」が新生・血流が増加し、メラニン生成を促進する刺激因子が放出され、メラノサイトの活動性が活発になると言われています。実際に毛細血管の拡張を伴う赤ら顔と肝斑を併発しているケースは少なくありません。
また、肝斑が発症している部分は表皮と真皮の間に存在する「基底膜」の構造がもろくなり、薄くなっていたり、穴があいていたりするという報告があります。それにより、表皮のターンオーバーで排出されるはずのメラニン色素が真皮に沈着してしまうことが、内服や外用剤では改善しない難治性の肝斑の実態と指摘されています。 |
●『シルファームX』の肝斑へのアプローチ
『シルファームX』は、微細な針を介して皮膚に高周波(RF)のエネルギーを直接伝える最新の「マイクロニードルRF治療」です。高周波の波長や針が到達する深さを変えることで、
幅広いお悩みを改善することができます。
肝斑の改善には、従来のRF機器になかった高周波がパルス波で流れるモード(途切れ途切れの波長でRFが作用するモード)で、真皮上層の「毛細血管」と表皮と真皮の間に存在する「基底膜」に選択的に作用して、メラノサイトの活動性(暴走)を抑えることができます。
薄くもろくなった基底膜を修復し、メラニン色素が深部へ沈着しやすくなっている状態を改善します。また、異常毛細血管を排除し、毛細血管の新生を促す血管内皮細胞増殖因子(VEGF-A)の生成を抑制、炎症物質を大量に発生させる老化した線維芽細胞を減少させて、メラノサイトへの栄養供給を断つことで過剰なメラニンの生成を抑制する効果があります。
また、高周波によるコラーゲン生成効果と針でできた傷を治そうとする創傷治癒作用による表皮の再生効果で、肌のキメや毛穴の開きの改善に高い効果を発揮します。真皮層に直接高周波を照射できるため、皮膚表面へのダメージが少なく、痛みやダウンタイムも最小限に抑えられます。また、スキンタイプを選ばず、レーザー治療では禁忌である日焼けしている肌への照射も可能です。
ただし、『シルファームX』は、肝斑の根本原因に働きかけ、メラノサイトの活動性を抑える治療なので、既に滞留したメラニン色素の分解と排出を促す『ピコトーニング』照射とのコンビネーション治療が同時に必要です。
●肝斑改善に効果的なコンビネーション治療
『ピコトーニング(蓄積したメラニン色素の排出)』×『シルファームX(基底膜の再構築・異常毛細血管の破壊)』
『ピコトーニング』
肝斑はほんの少しの刺激でメラノサイトが活性化しやすい状態にあるため、低出力のレーザー照射『ピコトーニング』で、蓄積したメラニン色素を、回数を重ねて少しずつ分解・排出していきます。当院が導入しているシネロン・キャンデラ社の『PicoWay(ピコウェイ)』は、現行のピコレーザーの中でも照射時間が一番短く (1兆分の1秒)、熱影響が周囲に拡散することなく、衝撃波(高音響効果)でメラニン色素を細かく粉砕できます。つまり、メラノサイトに刺激を与えずに、より少ない回数で効率的に肝斑治療が行えます。また、ピコトーニングで用いる皮膚への深達性に優れた1064nmの波長は、真皮内の過剰な毛細血管を収縮させる働きがあるのでで、肝斑だけでなく赤みなどの色ムラも取り除いて肌全体のトーンアップも図れます。さらに、定期的に治療を繰り返すことで、真皮のコラーゲンが増生され、お肌にハリをもたらし、毛穴の開き、キメの乱れなどを改善し肌を滑らかに整えます。
●肝斑改善への複合的なアプローチ
肝斑は、様々な経路からメラノサイトが刺激されている状態なので、複合的なアプローチが必要です。クリニックでの治療と並行し、内服薬、外用剤、保湿、紫外線対策を行うことが肝斑改善への近道です。
【内服療法】院内処方
・トランサミン(トラネキサム酸)
・シナール(ビタミンC)
・ハイチオール(L-システイン)
・ビタミンE |
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【外用療法】
・ナビジョンTAホワイトエマルジョン
・ルミキシルクリーム
・ナノメッドVAエッセンス
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肝斑治療後のアフターケア(紫外線対策と摩擦刺激を防ぐ)
肝斑のある部位ではメラニン色素を生成するメラノサイトが、慢性的に活性化している状態なので、ほんの少しの刺激でも悪化しやすい傾向にあります。そのため、日常生活のあらゆる皮膚に対する刺激をいかに軽減・排除できるかも重要です。クレンジング、洗顔時も優しく洗いましょう。また、シミ・肝斑治療をしている方の治療効果を上げ、治療後の良い状態を維持し再発を防ぐには、なによりも紫外線対策が1年を通して必要です。また、しっかり保湿をして、肌の新陳代謝を高めましょう。
クリニックでの治療例
■症状がごく軽度の場合や予防
初期治療『ピコトーニング』2回+『シルファームX』2回を1ヶ月毎、
メンテナンス治療『ピコトーニング』3か月毎+『シルファームX』3か月毎
■症状が中程度の場合
初期治療『ピコトーニング』4回+『シルファームX』4回を1ヶ月毎
メンテナンス治療『ピコトーニング』3か月毎+『シルファームX』3か月毎
■症状が強い場合
初期治療『ピコトーニング』6回+『シルファームX』6回
メンテナンス治療『ピコトーニング』3か月毎+『シルファームX』3か月毎
『シルファームX』による赤ら顔(毛細血管拡張症)・酒さ治療
赤ら顔(毛細血管拡張症)・酒さとは
「赤ら顔」は、肌に赤みが現れる症状のことです。赤ら顔は大きく分けて2種類あります。
「毛細血管拡張症」
毛細血管が原因の赤ら顔では、血管が拡張して血流が増える、あるいは皮膚が薄くなってしまい、皮膚の表面から毛細血管が透けて見え、顔が赤く紅潮してみえます。
「酒さ」
主に中年以降の女性に多い慢性炎症性疾患です。初期は鼻先、頬、眉間、顎を中心に赤みが繰り返し現れますが、進行すると毛細血管の拡張が見られ赤ら顔が続くようになります。寒暖差や飲酒で症状が強くなり、かゆみやほてり、わずかな刺激でも違和感を感じるというような自覚症状もあります。さらに慢性的になると、赤みに加えてニキビに似た赤い丘疹や膿疱も現れ、脂漏(皮脂の過剰分泌)が強くなり、部分的ではなく顔全体に症状が広がります。
●赤ら顔(毛細血管拡張症)・酒さの原因
「毛細血管拡張症」
・寒暖差
・太陽光(紫外線・近赤外線)の長期的暴露
・自律神経の乱れ(睡眠不足、ストレス、緊張など)
・加齢による女性ホルモンの減少
・誤ったスキンケアによって皮膚が薄くなってしまう「菲薄化」
「酒さ」
はっきりとした原因は明らかになっていませんが、下記が複雑に絡み合って発症すると考えられています。
・遺伝
・血管の異常(わずかな刺激で毛細血管が拡張しやすい)
・ニキビダニ
・刺激物(辛い食べ物など)の摂取
・アルコールやカフェインの摂取
・寒暖差
・太陽光(紫外線、近赤外線)の長期的暴露
『シルファームX』の赤ら顔・酒さへのアプローチ
『シルファームX』は、赤ら顔(毛細血管拡張症)や紅斑毛細血管拡張型の酒さの原因となる真皮層の異常な毛細血管を排除して、毛細血管の新生を促す血管内皮細胞増殖因子(VEGF-A)の働きを抑制するなど根源的な原因にアプローチができる治療です。また、毛細血管が拡張する原因となる炎症物質を大量に発生させる老化細胞も減少させます。
シルファームXの痛み
効果の高い外用麻酔クリームを十分に効かせてから治療を行います。頬外側や額など、部分的にチクチクした軽い痛みとわずかな温感を生じることがあります。
シルファームXのリスクとダウンタイム
<痛み>チクチクする程度 <腫れ> 無し <内出血> 無し医療用マイクロニードルによる微細な針孔は2時間程度で閉じます。『シルファームX』は針を刺しますが、RFの止血効果で内出血もありません。高周波の熱による軽いほてり感は、施術後の導入(トラネキサム酸・白雪注射・BENE)と冷却でほぼ治まります。赤みは個人差があり1~6時間程度続きますが、施術翌日にはほぼ消退します。一部目周りなど針痕が赤く残ることがありますが、メイクでカバーできる程度です。
施術6時間後から洗顔、洗髪も可能です。ただし、施術後は肌が敏感になっているので強く擦らないようにし、当日のみ入浴は短時間にしてください。ほてりが辛い場合は、保冷剤で冷やして下さい。翌朝から通常のスキンケア、メイクが可能です。数日間は新しい化粧品の使用を控えて下さい。
シルファームXの施術頻度や持続について
1ヶ月に1回の頻度で、5~6回の繰り返し施術を行います。メンテナンスは3ヶ月毎の照射が推奨です。効果の感じ方と持続には個人差があります。
シルファームXの禁忌事項
下記に該当される方は、この治療を受けることが難しい場合がありますのでご相談ください。
*キシロカインにアレルギーのある方は事前にお知らせ下さい。
・真性ケロイドの方(肥厚性瘢痕の既往はご心配ありません。)
・ご希望部位に無治療の皮膚炎や感染がある方
・重症の糖尿病・膠原病・精神疾患の方
・ペースメーカーや植え込み型除細動器を挿入されている方。
・施術部位にアートメイクをしている場合、色素の一部が反応する可能性があるので、施術が出来ない場合があります。必ず事前に医師に申告ください。
また、安全のため、他院での美容医療の治療歴を担当者にお伝えください。
※レチノイン酸等のピーリングを行っている方は治療前後1週間程使用をお控えください。