すそわきが(外陰部臭症・すそ腋臭、裾わきが)
「すそワキガ」とはデリケートゾーンや外陰部の臭いのことで、「外陰部臭症」「しもわきが」「トベラ」とも呼ばれます。ニオイのもととなるエクリン汗腺やアポクリン汗腺が、女性器や陰毛部にも多数存在するために、わきがと同じような刺激臭を発することがあります。
本来エクリン汗は無臭ですが、皮膚の常在菌(雑菌)により分解され、皮脂腺から分泌される脂肪酸と混じると、汗臭いにおいが発生するようになります。特に、アポクリン汗腺から出る汗は、脂質やタンパク質など臭いの元になる有機物を多く含み、細菌により分解されると臭いがさらに強くなります。アポクリン汗腺は動物の芳香腺の遺残であり、性成熟期に特徴のある刺激臭を発します。臭いのもとになっている物質は、酢酸、蟻酸、プロピオン酸などの不飽和脂肪酸、アンモニア、メチルアミン、トリメチルアミンなどです。アポクリン汗腺が存在するのは、脇の下と外陰部、耳の中、乳輪周囲、臍の周囲です。
すそワキガは、男性より女性に多く、すそわきがを有する方の多くに、ワキの腋臭症もあります。また、すそわきがや腋臭症がある方は、耳垢が湿っています。近年、耳垢が湿型か乾型かを決定し、腋臭症の発症に関連する遺伝子(16番染色体のABCC11遺伝子)が解明されました。日本人での保有率は25%で、アフリカ系、欧米系人種より少ないのですが、少数派ゆえに社会的圧力を受けることがあります。また、日本の高温多湿環境下では臭いを強く感じやすいという傾向があります。なお、ストレスや緊張、性的な興奮を伴うと、臭いが強くなる傾向があると言われています。
外陰部の臭いに関しては、人になかなか相談できないデリケートなお悩みですが、ボトックス注射で解決できることがあります。シワ治療に使用するボトックスを、デリケートゾーンに少量ずつ注射することで、神経終末のアセチルコリン放出を抑制し、アポクリン汗腺とエクリン汗腺の働きを抑制します。切開による傷やひきつれのリスクがある手術にくらべ、簡単に多汗と臭いを改善します。皮脂腺の働きも抑制するので皮脂由来の脂肪酸量も減少します。また、体温調整に役立つエクリン汗の分泌が減ることで、ニオイの拡散も軽減します。汗腺を取り除くわけではないので、効果は永続的なものではありませんが、約半年~1年位の間は汗と臭いの軽減が可能です。繰り返し注射を行うことでエクリン汗腺やアポクリン汗腺の機能が徐々に弱まり、持続期間が長くなったり、効果が高くなったりします。