雑誌『婦人画報』2017年10月号(9月1日発売 掲載ページP202~203)
特集:BEAUTY&Health婦人画報の美の扉「毎日30分、入り方で大きな差がつく!長寿の温浴」に慶田院長の監修記事が掲載されました。
温浴とは、湯に浸かり、体を温めることによって生じる様々な生体反応を享受する入浴のことです。お風呂が大好きな日本人は、知らず知らずのうちに、温浴によって数々の健康効果を得てきました。日本人に受け継がれてきた"健康遺産"ともいえる、お風呂時間をより豊かにする秘訣をお教えする特集です。
【乾かぬ先の入浴術&ボディケア】
ここからは肌のお手入れ編です。いいことだらけの温浴ですが、じつはバスタイムは一日のうちで、もっとも乾燥リスクの高まるタイミングです。入浴で肌を乾燥させないために、注意すべきことをまとめました。
◎年々、皮脂もバリア物質も減少。乾く部分は保湿の徹底で改善します。
真冬をピークとして、皮脂欠乏性湿疹で来院する方が増えてきます。すねや腰、わき腹などの肌が乾燥し、かゆみや痛みを伴う症状です。話を伺うと、間違ったお風呂の入り方をしている人が少なくありません。
ナイロンタオルなどで強く擦ったり、洗浄力の強すぎるアルカリ性の石鹸で洗ったりすると、肌が本来もっているバリア機能が壊れて、外的刺激を受けやすい状態になります。女性の場合、25歳から徐々に皮脂分泌が減ってきます。加齢に伴い、肌のバリア物質といわれる角質細胞間脂質や天然保湿因子(NMF)も加齢とともに減少していきます。ですから、皮脂腺の少ない乾きやすい部分(肘下・膝下)の保湿を徹底するなど、若いころとは違うボディケアが必要になってくるのです。
湯に浸かるだけで洗わない、という人もいるようですが、肌質と生活環境にもよりますが、一日中家で穏やかな生活を送る人であれば、一日に一度お湯で流すだけで十分汚れは落ちます。頭、顔、外陰部や脇、デコルテなど皮脂の多い部分のみ洗浄剤で洗うなど使い分けも有効です。一方、男性に多いミドル臭は酸化した脂が原因。対策として、お湯だけでなく洗浄剤でしっかり洗いましょう。
◎入浴で肌の乾燥を加速させないためには?
<乾きやすいのは膝から下、肘から先>
体は部位によって皮脂分泌量が異なります。皮脂量が圧倒的に少ないのが、膝の下と肘から先の部分。毎日洗浄剤で洗わず、ぬるま湯洗いで十分です。反対に、頭部、顔、デコルテや背中の上部、脇などは皮脂が多く、その油が酸化して刺激となるため、毎日、洗浄剤の泡で洗うのが正解。皮脂の量は年齢や性別などの個人差があるので、肌と相談して調整することが大切です。
<乾燥の元凶は「熱い湯」と「ナイロンタオル」>
湯温の設定は、夏場は39~40度、冬場は41~42度を超えないように注意しましょう。熱すぎる湯は皮脂膜や肌のバリア物質を流出させてしまいます。入浴中の肌はデリケートで、ナイロンタオルでのゴシゴシ洗いは言語道断です。汗や皮脂などの汚れは湯でほとんど落ちます。洗浄剤を泡立てて泡でさっと拭うように手洗いするだけで十分。体を洗うタイミングは湯に浸かる前より後のほうが乾燥を防げます。
<加齢で角層は2割も肥厚。硬い部分のケア法とは>
高齢者の肌は、カサカサなのにゴワゴワ。加齢に伴い角層のアミノ酸量が低下し、皮膚のうるおいを司る天然保湿因子や角質細胞間脂質は減少するのですが、その低下したバリア機能が補おうと、角層は2~3割も厚く硬くなります。膝や肘、かかとなど特に角質が厚い部分には尿素配合のクリームを1週間ほど続けて塗るとやわらかくなります。ゴマージュなどでケアした後はより乾燥しやすくなるので、直後の保湿は必ず行いましょう。
<泡立てれば、洗浄剤の量は最小に、洗浄力は最大になる!>
洗浄剤はよく泡立ててといいますが、その理由は、泡立てることで洗浄力が格段に増すため、洗浄剤の使用量を最小限に抑えられることにあります。汚れが落ちるのは、洗浄剤に含まれる界面活性剤の働きによるものですが、肌には刺激になることもあります。よく泡立てると洗浄剤の量を控えられるので、肌への刺激が軽減し乾燥を防げます。洗浄剤は、敏感肌用のセラミドなど保湿剤配合のものや、アミノ酸系の低刺激のものを選びましょう。目安は洗い上がりにツッパリ感を感じないものが良いでしょう。
【入浴で肌の乾燥を加速させないために......】
◎洗浄剤
不要な汚れや皮脂膜はきちんと落としつつ、肌に必要なバリア物質は洗い流さない、弱酸性~中性の洗浄剤を選びましょう。敏感肌用の表示は、低刺激であるひとつの目安になります。
◎保湿剤
入浴後は速やかに保湿をしましょう。ワセリン系の蓋をするタイプのものより、ヒアルロン酸やセラミド、グリセリンなど、それ自身が水を抱え込む成分を含んだ、モイスチャライザー(乳液・クリーム)タイプがおすすめです。
◎デリケートゾーン用 洗浄剤
増えつつある外陰部専用の洗浄剤です。肌がより敏感になる婦人画報世代は、臭いをケアする香りの強いものより、低刺激でシンプルな処方のものを選びましょう。
世界でも注目されている、健康長寿を支えたのは日本独自の"温浴"習慣です。最近では、シャワーのみで済ませる方も多いようですが、健康と美の為に温浴を習慣にしてみましょう。
参考に、是非ご一読下さい。