『食品化学新聞』2019年4月18日発行

特集:特別対談「内から引き出す肌の自活力」をテーマに、美容ジャーナリストの藤井優美様と対談した内容が掲載されました。

【バリア機能の衰えによる微小炎症が増加】
●現代女性の肌トラブルとは?
‟ゆらぎ肌"と呼ばれるちょっとした肌の不調を抱える女性が非常に増えてきていますが、目に見える疾患としての症状は出てきていない、微小炎症の状態です。
医学的には「未病」の状態ですが、角層が乱れて水分量が減少して、肌がカサついたり透明感が失われたり、見た目に影響します。アレルギー素因によるアトピー性皮膚炎や、慢性的に肌が過敏な状態にある敏感肌とは異なり、誰にでも起こり得る症状の一つで、肌に対する内外環境が悪化したことで、季節の変わり目などのタイミングで多くの女性が悩まされています。

藤井様も、この10年で、自称も含めなんとなく不調な状態を訴える「ゆらぎ肌」と言われる方が年々増えているように感じているとのことでした。私自身も実際に、ここ数年は「ゆらぎ肌」がテーマの監修に当たったり、取材を受けたりする機会が多くあります。
実際に、‟ゆらぐ"という症状にも色々なタイプがあります。乾燥や化粧ノリの悪さ、軽い皮膚炎などわかりやすい症状から、肌がくすんだり、ハリがなくなることもそのひとつです

【実際に肌で何が起こっている?】
肌は、気温や湿度、紫外線や外気に含まれる物質など、多くの外部刺激によりストレスを受けています。そんな刺激から肌を守るバリア機能が正常に働いていれば、肌はなかなかゆらぎません。しかし、バリア機能が脆弱になっていると、軽微な刺激に対する抵抗力が弱まり、空中浮遊している大気汚染物質や花粉、ハウスダスト、化粧品などのさまざまな刺激が角層の奥まで入り込みやすくなり、炎症を引き起こします。
そんなバリア機能の鍵を握っているのが、肌の一番表面にある「角層」です。わずか0.02㎜(食品包装用透明ラップと同程度)の厚さのなかで、角質細胞がブロックのように10~20層積み重なり、肌バリアの最前線として外部からの異物の侵入をはばむバリア機能を備え、同時に内部の水分の蒸発を防ぐという役割を担っています。
その「角層」には肌の保湿を担う3大要素が存在しています。
・皮脂膜...汗などと混じり合って肌の表面の膜となり、水分の蒸散を防ぐ。
・天然保湿因子...角質細胞内に存在するアミノ酸や尿素などで、水分を保持。
・角質細胞間脂質...水を抱え隙間を埋めながら角質細胞同士を接着する機能を持ち、その主成分がスフィンゴ脂質(セラミド)。
水分保持に役立つ割合は、皮脂膜が2~3%、天然保湿因子が17~18%、そして角質細胞間脂質が80%です。
つまり主役は角質細胞間脂質であり、その半分はセラミドです。肌を健やかに美しく保つためにはセラミドが必要不可欠です。ですが、表皮細胞の中で合成されるセラミドは年齢とともに減少します。実際に角質細胞間脂質の量や質が低下すると、バリア機能が乱れ、少しの刺激で炎症を起こします。そもそも角層の厚さはわずか0.02mmほどしかないので、極めて薄いラップに開いた無数の穴から、本来なら奥のほうにはまず入ることがないごく小さな刺激物質まで侵入してくるようなものです。

ゆらぎ肌=炎症起こした肌。肌内部でこうした微弱炎症が続くと細胞や組織にダメージを与え、シミやちりめんジワなどの肌の老化につながることがわかってきています。では、バリア機能を高めるにはどうしたらいいいのでしょうか。

●‟肌の自活力"セラミドを自分で作る
バリア機能の中心を担うセラミドや天然保湿因子などのバリア物質は、ターンオーバーの過程で自ら作り出していくものです。今まではそれらを補うのは化粧品という考え方が基本でしたが、最近はカラダにいい食事やサプリメントなどからも補い、「自活力」を引き出すことが注目されています。
肌にいいものとして、認知度が高いのがコラーゲンです。食べ物とリンクしていたのでわかりやすかったのかもしれません。皮膚に限らず腱や靱帯などさまざまな器官の構造を強固にする成分ですのでとても大事ですが、肌表層の砦、バリア機能として炎症を防ぐ観点でセラミドも大事です。しかし、一般的には経口で摂って増やすという考えがまだ及びにくいのかもしれません。
セラミドの材料は脂質ですから、良質な油を摂ることも必要ですが、セラミドそのものを摂ることでも皮膚に変化が起こります。角層の水分量などの改善効果に関するエビデンスがここ数年報告されつつあり、肌のアンチエイジングという観点からも注目されています。
食べたセラミドがそのままの形で肌に届くというよりは、食べることで、体内でセラミドの合成に関係した酵素が活性化することが分かっています。例えば、セラミドを塗布した場合、塗布した場所は潤いますが、塗った場所は一部に過ぎません。一方食べればその効果は全身に及ぶと考えられます。
ただし、セラミドだけを摂取すれば良いわけではありません。例えば、1日にセラミドを1800μg摂取して、セラミド合成のスイッチを入れても他の材料が揃っていなければセラミドは生産できません。ターンオーバーにはビタミンB群やCも必要です。しかし、大量の飲酒はB群を消費し、喫煙はCを破壊し、女性ホルモンの分泌も低下させます。

また、スマホを見続けるのもストレスや睡眠不足につながります。美肌作りには、生活習慣全体の見直しも必要なのです。美容と健康の5本柱として、「食事」「睡眠」「排泄(腸内環境)」「運動習慣」「ストレスコントロール」を提唱しています。

【肌によい食事とは?】
●美肌をフックに食習慣を見直す
ライフワークの一つとして、光老化対策や正しいスキンケア、身体に良い食事、インナーケアについてお伝えしたいと考えています。若いときは自分が病気になるとか、老いることを想像もしていませんが、もしキレイになるための食事を20~30代の頃から意識して摂っていったなら、間違いなく健康寿命は延びますし、生活習慣病のすべてのリスクが下がります。
ですから、お肌の一つのフックとして食習慣を見直していただきたいです。昔から医食同源というように、食べたもので身体は全部できています。
最近の若年女性は、栄養不足が深刻です。お昼時にコンビニで若い女性が何を買うのかなと見ていると、意識の高い方たちはチキンサラダと豆腐とおにぎりとヨーグルト。その一方でカップラーメンと菓子パンという人も多くみられます。
え、運動部男子かな?という人も結構います。啓発はまだまだ足らず、いくら発信しても届いているのは意識高い系女子ばかりで、残りの方々は基本から理解していないように思えます。子どもの頃から栄養の基礎知識をしっかり学ぶ必要があると思います。

食べ物が生命活動の必要最低限しか摂取できていない状態では、まず、爪・髪・肌がボロボロになります。栄養素は肝臓・心臓・脳など生命維持に欠かせない重要臓器に優先的に配分されるので、肌などは原料不足に陥ります。
若い女性が親元を離れて一人暮らしをはじめて半年ぐらい経つと、髪の毛と肌のツヤが悪くなり始める人が出てきます。それは、食費を絞るからです。若いから装いたいし、遊びにも行きたい、だから、エンゲル係数は低くしてもいいと思ってしまうかもしれません。しかし、できるだけそのお金を食べる物に回していただきたいのです。
食事・栄養は一品だけたっぷり摂っても効果は期待できません。不足した栄養成分があると、合成がストップしてしまうのでバランス良く摂る必要性があります。色とリどりの野菜や果物、タンパク質をしっかり摂って、腸内環境を整えるために食物繊維は海藻などの水溶性・野菜の不溶性を両方と、発酵食品も一緒に食べましょう。また、良質な脂質や雑穀類もちゃんと摂ることです。多品目とバランスを重視しましょう。

●食育で肌つくり、身体つくり
私の母は看護師だったので、幼少期から、血をキレイにする野菜としてホウレン草料理がほぼ毎日出てきました。また、トマトは美人の野菜ですよ!と言われてきました。食育と言いますか、そういう刷り込みは大人になっても非常に大事です。
大人の女性に発信するメリットは、マーケットを動かす意味でも、次の世代に繋げるためにもいいと思います。
そして次に重視して欲しいのは睡眠です。しっかり寝て、きちんとと食べることが健康な身体、ひいては美しい肌を作るにはなにより大切なのです。美は1日にして成らず!継続が大事です。

【美は一日にして成らず】
●継続接種はなぜ必要?
食べたものはダイレクトに肌へ届き、その効き目が持続すると思われている方が多いのですが、それはあり得ません。一般的に、口から摂取した栄養分は胃や腸で分解・吸収され、必要としている細胞へ材料として送り届けられます。つまり、肌にいいものを摂ったからといって、それば必ずしも肌の材料になるわけではありません。さらに、時間が経てば必ず対外に排出されます。これはサプリや機能性食品も同じです。だからこそ体内に必要な成分がいつもある状態をキープするために継続摂取するのが望ましいのです。まさに「美は一日にして成らず」今日摂ったのが明日すぐに反映されるわけではなく、数週間から1ヶ月後に結果が現れます。それも劇的ではなく、少しずつです。でも、続けることで確実にいい状態が続くようになります。

人は誰しも加齢によって肌の機能が低下しますし、ストレスなどによって不調をきたしたりします。サプリや機能性食品はこれらに対する‟抵抗力"をサポートするものと考えるといいかもしれません。
機能性食品としてセラミドを配合したドリンクやサプリメントなども発売されています。最近慶田も飲んでいるのですが、結構調子が安定してきて気に入っています。インナーケアとして手軽に有効成分を補うのに、活用すると良いでしょう。

食生活自体がインナービューティだということが基本です。
正しいスキンケア、栄養バランスの取れた食事、こまめな運動、質のいい睡眠を心がけて"肌のゆらぎ"をケアしましょう。

是非、ご一読ください。