雑誌「婦人画報」2019年8月30日発売 (P218~P219)掲載ページ


特集婦人画報婦人科【更年期からのネクストレッスン】に慶田院長監修の記事が掲載されました。

皮膚は全身状態の映し鏡です。体内を守る大きなバリアでもあります。皮膚老化の症状はいくつかありますが、放っておくと老年期の大きな病気につながるものもあります。今から気をつけるべき皮膚老化のケアをお伝えします。

更年期以降、老年期に向けて皮膚の老化はどのように進むのでしょうか。
「皮膚が老化することで、表皮の角質層のバリア機能が低下し、皮膚が乾燥します。新陳代謝が落ちるに従い、ターンオーバーのペースが遅くなる事で、バリア成分の細胞間脂質が低下するからです。同時に、皮脂腺から出る皮脂量が減少し、角層が固くなります。」と慶田朋子先生。
皮膚が健康な状態であれば外的な刺激から肌を守り皮脂や汗などのバランスを保つことができます。しかし、加齢により細胞間脂質や皮脂が不足してしまうと、外的刺激に弱くなります。「皮脂膜が減少すると、肌の乾燥を引き起こす上に、軽微な刺激で湿疹までできてしまうのです。これらの皮膚老化によって、体に起こりやすいのは"乾皮症"と"皮脂欠乏性湿疹"です。」

更年期以降、顔に起こる注意すべき病気はありますか?
「紫外線や老化に伴って生じるシミがありますが、注意したいのは"脂漏性角化症(老人性疣贅)と呼ばれる"イボ"が混ざっていることです。これ自体は良性ですが、茶、黒色で表面がガサガサした隆起性のため目立ちます。数が急に増えてかゆみがある場合は、レーザートレラー症候群といい、内臓のがんと関連した症状のことがあります。通常は、経験のある医師の診断で見極めができます。」脂漏性角化症に似ているものとして、日光角化症(有棘細胞がん)やメラノーマなどの皮膚がんの初期病変があり、見た目では区別がつきにくいことがあります。イボの自己判断は禁物です。

皮膚老化によって体と顔に起こりやすい病気があります。皮膚が老化すると起こる3大症状は、①乾燥、カサカサ②バリア機能の低下③ターンオーバーの低下 皮膚老化でまず起こりやすい症状はこの3つです。3つは関連していて、ターンオーバーの低下によりバリア機能の低下と乾燥につながります。
・乾皮症 皮脂や汗の分泌が減り皮膚が乾燥、ガサガサして亀裂やひび割れ、かゆみなどの症状もあります。
・皮脂欠乏性湿疹 乾皮症になんらかの刺激物の接触で刺激性接触皮膚炎などが加わり、湿疹を生じた状態です。
・脂漏性湿疹 紫外線や加齢に伴って生じる皮膚の良性腫瘍で、いわゆる老化による「イボ」のひとつです。
・日光角化症 紫外線を浴び続けたことで発症する皮膚がんのごく早期の病変で60歳以上に多いです。
・肝斑 肌との境界があいまいで、頬骨、目尻、口の周辺など広範囲に左右対称に現れるのが特徴です。
・日光性色素斑(老人性) 5~20mmの大きさで円形にできることが多く、境界がはっきりしているのが特徴です。

体に起こりやすい乾皮症や皮脂欠乏症性湿疹は、更年期以降や老年期に、すねや太もも、腰骨部、前腕などによく見られます。原因としては、おもにアトピー素因などの先天性のものと皮膚老化。あとは、過度な空気の乾燥、洗浄剤などによる脱脂、物理的な接触刺激があります。「特に多い原因が、洗いすぎによる強い刺激です。一日2回以上の入浴やシャワー、洗浄力の強い石鹸の使用もよくありません。皮脂膜は、強くこすることや過剰にあらうことで剥がれてしまうのです」と慶田先生。天然保湿因子(NMF)やセラミドまで洗い流してしまうことも。「対策としては、とにかく保湿。洗いすぎない、こすらない。熱めのお湯で長風呂をしないこと。ミルク系の入浴剤後すぐにボディークリームを塗ることも大事。朝晩2回塗ると保湿効果が上がります」顔にできるイボで日光角化症(前がん病変)の見極めは、急に大きくなる、左右非対称、いびつな形、色ムラがある、イボ周囲に炎症があるなど。特に黒くて7mm以上のイボなら悪性黒色腫や基底細胞上皮腫の可能性があるので、すぐ受診をおすすめします。より正確な診断にはダーモスコピー(特殊な拡大鏡)が有効です。
「皮膚の性状を観察するだけなので、痛みは伴いません。皮膚科専門のクリニックで対応可能です。脂漏性角化症も日光角化症も、炭酸ガスレーザーで削りとればきれいになります。液体窒素で焼くのは黒ずみが残る可能性があるのでおすすめしません。50~60代以降にはどちらのイボもできやすいので気をつけましょう。予防には、日焼け対策が重要です。日焼け止めは、飲むのも塗るのも効果があります」シミはがんなどの大きな病気につながることはないですが、顔は毎日目にする場所で、老化や衰えを自覚しやすい箇所ともいえます。「顔のメンテナンスは、老年期においても、精神面を支える意味で決して軽視できないところだと思います。シミが隆起してイボのようになっていく場合もあります。50代以降に目立ってくる方が多いので、早いうちに治療やケアをしておく方が治療も簡単に済むことが多いです。それぞれのシミに合わせたレーザーなどの光照射が有効です」

体も顔も皮膚を元気に保つには、食事も大切です。偏らずバランスよく摂りタンパク質と良質の資質の摂取はとても大事です。皮膚のためには油抜きは厳禁です。皮膚は自分で毎日目にするところなので不調を発見しやすく、エイジングコンプレックスにも大きく関わります。皮膚老化が始まる更年期からケアしておけば、治療が簡単で将来の予防的土台にもなります。
是非、ご一読ください。

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