雑誌『クロワッサン』2022年No.1064(2022年3月10日発売)
特集〝シミ・シワ・たるみを解決!自信が持てる、肌ケアとメイク″(P12~15掲載)に皮膚科専門医の慶田院長の監修記事が掲載されました。
あまりにも長く続いた非日常から、マスクの下こそ、緊急事態宣言!この数年で加速したシミ、しわ、たるみ。放置していては、事態は一層深刻に。正しく守るスキンケア、効果的に攻めるメイクで、自信が持てる笑顔、取り戻しましょう。
■まだまだ続く肌の緊急事態、乗り切るための術を身につけよう。
コロナ禍でのマスク生活も早2年。こんなにマスク生活が続くのは今までになかったこと。エイジングの肌悩みとは別に、マスクによる肌トラブルが生じやすくなるのは当然だと思います。最初はマスクによる肌環境の変化に戸惑う声や内容が多かったのですが、今は経験値も上がり、ウィズマスクを模索する段階へ。
ただ、このコロナ禍を経て美容への意識がより高まりおこもり美容に励む人と、マスク姿に油断して日常のケアも疎かになりがちな人と2極化しているように感じます。
■マスクによる肌トラブルは、基本のケアが何よりも大切?
マスクによる肌トラブルは、肌荒れ、乾燥、ニキビのほかにも、マスクで皮膚が擦れることによる赤み、かゆみや湿疹などを伴うマスク皮膚炎、シミや肝斑の悪化などが見られます。肌が刺激に敏感になっていますから、基本の丁寧かつ低刺激なスキンケアで肌をいたわることが急務です。さらに美肌作りの土台となる生活習慣をより丁寧に気遣い、肌と体の両方の健康を保つことが大切です。
■正しく対処するためにも、今あるリスクを把握しよう。
◇リスク1 1日中マスク生活
マスクを長時間つけることで生じやすい肌トラブルは「蒸れ」と「擦れ」が二大原因。特に冬の間は湿度の低下や暖房による室内外の寒暖差も加わり、肌の乾燥が加速しがちです。肌は乾燥するとバリア機能が低下して少しの刺激でも炎症を起こしやすくなるため、マスク内で肌が蒸れ、擦れると赤みやかゆみや湿疹なども生じやすくなるのです。
これから春にかけて、スギやヒノキの花粉の季節が到来しますが、四六時中マスクをしている分、アレルギー性鼻炎は軽く済むかもしれませんが、マスクによるダメージで肌のバリア機能が弱まっている今は、外からの刺激を跳ね返すことができません。少量の花粉にも反応して、肌荒れや湿疹が広範囲に生じる可能性もあります。
外出先でもできる防止法が、濡らしたハンカチなどで蒸れによる汗を優しく拭き取ること。汗はマスク荒れの原因のひとつといわれているので、押さえるように拭きとったら、乾燥しないよう保湿乳液やクリームの重ねづけをしてください。毎年花粉症の症状がひどい人は、室内でも窓は開けず空気清浄機を回す。帰宅したら玄関先で服をブラシで払い、リビングや寝室に花粉などを絶対に持ち込まないことが大切です。
◇リスク2 外出控え。
顔の筋肉は激しく動かしすぎると表情ジワを深くする一因になりますが、動かさないのも重力に負ける一方に。外出控えで人と会って話したり笑ったり、表情筋を動かす機会が減ると筋肉が硬く縮こまって鈍麻します。意識して滑舌良く喋り、口角を上斜め方向に引き上げて美しい笑顔を作るように動かしましょう。
◇リスク3 パソコン・スマホ時間の急増
目を酷使することで起こる筋肉疲労も、目元のハリを失わせる原因になります。パソコンやスマホを長時間使うときは合間に目を休める習慣を作りましょう。姿勢の悪さも見過ごせません。パソコンやスマホの長時間利用で、下向きの姿勢がクセになると重力で顔の皮膚が下がり、たるみや二重顎が進みます。顔を上げて目線の高さで見るように心掛けてください。
◇リスク4 生活習慣の乱れ
いくらスキンケアをしっかり行っても、生活習慣が乱れると肌トラブルが生じやすく、しかも治りにくくなります。中でも食事は重要。弾力のある肌を守るためにはたくさんの栄養素が必要です。特に肌の構成要素を再生させるために積極的に摂りたいのがタンパク質、ミネラル、ビタミンなど。脂質を避ける人もいますが、肌のバリア成分で要となる細胞間脂質(その半数はセラミド)やホルモンの原料となるので、肉や乳製品、油などもバランスよく摂取してください。食事は食べる美容液と考えてみてくださいね。
また、コロナ禍の運動不足も大敵。日常の活動量が減ると筋肉量が落ちて代謝も体の循環も低下するため、適度に体を動かして汗をかくことが大切です。ちなみに女性も筋トレをすると代謝が上がり冷え知らずの太りにくい体質になりますし、成長ホルモンの分泌効率がよくなるので皮膚などの再生力も高まります。
◇リスク5 メンタルダウン
強いストレスがかかると血液の巡りが悪くなり便秘や睡眠不足をはじめ体にさまざま変化が起きます。すると肌のバリア機能も低下。さらにコロナ禍で不安感が強くなっている人も増えています。マスクをつけっぱなしだと息苦しいだけではなく呼吸が浅くなりがちなので、周りに人がいないときは一度外して深呼吸をして肺の奥まで空気を入れ、幸せだなとつぶやくとストレスコントロールにもつながります。人はどんな状況でも、幸せだなと自ら思うことで幸せに感じる瞬間が得られるものですし、それは健康にも大きく影響します。
是非ご参考になさってください。