雑誌「eclat/エクラ」2019年12月号(11月1日発売 掲載ページP206~211)

特集「ほくろ、いぼ、ガングリオン。この"できもの"放っておいて大丈夫ですか?」に慶田院長の監修記事が掲載されました。

【このごろ増えたと感じる人、急増中!】
ほくろが大きくなってきたり、体にイボができたり・・・。エクラ世代になるとなぜか増えるのが"できもの"。この正体は?治療法は?そんな疑問や悩みを解決します!

お悩み① 部位:鼻の横
鼻の横(メガネの鼻パッドの当たるあたり)に、イボなのか、脂肪のかたまりのできものらしきものがあります。メガネをかけたときに違和感があって、よーく見たら突起したものが、大きくなってきてメガネをかけると痛いです。
目が悪いので拡大鏡を購入して首を見たら、小さなイボの集団が・・・・!

お悩み② 部位:首
昔は何もなかったのにクリームを塗るときに何か引っかかりがあり小さなイボができているのに気がつきました。色ムラがあってシミなのか消えるものなのかわかりません。

お悩み③ 部位:ビキニライン
ビキニラインにあるほくろが気になります。脱毛してから出現しました。3mmくらいで大きさは変わらないのですが、3Dシールのようにポコッとしています。

お悩み④ 部位:肘
10年くらい前に肘にこぶみたいなのがたくさんできて、切って、生検に回してもらいました。

お悩み⑤ 部位:眉
以前から眉毛の中にイボがあります。大きくなったり、小さくなったりします。イボの部分は毛が生えないため、大きくなったときは白くボコッとして、わかります。小さいときは、触っても、あるのかないのかわからないくらいです。

お悩み⑥ 部位:足裏
足裏に違和感があり見てみたら、皮膚の中に小さな膨らみが。病院でレントゲンを撮ってもらったところ、おそらく脂肪か水かなにかがたまったものであろうとのこと。
「大きくなってきたらまた来て」といわれ、様子を見ることに。数年たちますが、大きさは変わらずです。

お悩み⑦ 部位:目の下
目の下に白い膨らみができて気になります。目のところなので眼科なのか皮膚科なのかわからない。

お悩み⑧ 部位:わき
右わきにポコッとしたできものがあるのに気がつきました。ほくろかなと思ったけれど、色は薄いし・・・・。とりあえず放っておいています。

お悩み⑨ 部位:腕
腕の真ん中あたりにこぶのようなものがあります。痛くもないのでそのままにしていますが、夏などは目立つので、バングルをしたりして隠しています。

お悩み⑩ 部位:背中
背中にずっとできものがあり、ブラジャーをとめる場所にあるので、すごく気になっていました。病院で相談したところ、万が一悪性だといけないのでといわれ、悪性ではなかったので、ホッとしました。

【良性のものが多いが、皮膚がんの可能性もあるので要注意】
上記のように多くの人が"できもの"が気になっていることが判明!年齢を重ねるにつれ、できものができやすくなる理由とは?
できものといっても非常に多くの種類があります。黒や茶色のもの、赤いもの、肌色のものと色もさまざまで、大きさも1~2mmほどの小さなものから、20cmほどの大きなものまであります。また、どこからできているかもいろいろで、毛穴由来のもの、皮脂腺や汗腺由来のもの、母斑(ほくろ)由来のもの、表皮由来のものなどさまざまな種類があります。加齢によって増えてくるように感じるのは、できるものはゆっくりと育つものが多く、年齢を重ねると目立ってくるからです。ほくろもゆっくりと育っていくことが多いですし、脂漏性角化症という老人性イボのように紫外線の影響で発生するものも、加齢とともにしだいに濃くなり目立ってきます。こういった理由からエクラ世代になるとできものが気になりだす人が多いのです。

【"何科に行けばいいかよくわからない"という声も多数!】
基本的に、皮膚表面にあり、触ることができるできものは皮膚科、皮膚の下深くにできているものは形成外科へ行きましょう。いずれにしろ、できものの種類の診断は熟練した医師でないとむずかしいので自己判断は禁物です。皮膚科や形成外科できれいに治せるものが多いので気になる場合は受診をしましょう。

【皮膚の"表面にできる"できもの編】
まずは、皮膚の表面にできる代表的なできものをご紹介。皮膚がんとの見分け方も要チェック!

□脂漏性角化症・・・頭や顔など日光が当たる部位にできやすい少し隆起した肌色、茶色、黒色のイボ
脂漏性角化症は表皮の良性腫瘍の一種です。老人性イボともいわれ、老化現象のひとつですが、体質によっては20代ごろから徐々に増えてくることもあります。少し隆起していて表面がざらざら、でこぼこしているのが特徴で、色は肌色から薄茶色、焦げ茶色、暗黒色などさまざまです。頭や顔、首、手の甲など手のひらを除くあらゆる部分にできます。遺伝的要因や、日光(紫外線)による光老化でできるとされ、特に日光に当たりやすい顔、頭、首、背中、手の甲によく見られます。最初は1~2mm程度と小さいのですが、徐々に大きくなって隆起し、大きいものだと2~3cmほどになることもあります。良性腫瘍なので必ずしも治療の必要はありませんが、顔や手の甲などにできて見た目が気になる場合や、髪をとく際に引っかかるなど生活に支障をきたす場合に治療を受ける人が多いようです。

【特徴】
◆出来る位置:顔、頭、体幹
頭、顔~首、手の甲、体幹など手のひらや足の裏を除くあらゆる部分にできる。特に、日光が当たりやすい顔、頭、首、背中、手の甲にできやすい。
◆色:肌色、茶色、黒
色は、肌色や薄茶色、焦げ茶色、暗黒色などさまざま。大きさは1~2mmの小さなものから、2~3cmほどのものまである。

◆治療法1. CO2レーザー
CO2レーザーで脂漏性角化症を蒸散させ、皮膚表面からごく浅く削りとる方法です。傷はごく浅く、出血もないので傷あとをほぼ残さず治せます。局所麻酔をして行います。
◆治療法2. 液体窒素による凍結療法
液体窒素で凍結させ、脂漏性角化症の組織を物理的に粉砕する方法です。麻酔や手術は不要ですが、色素沈着が残りやすく、一度でとれないことが多いので美容的にあまりおすすめできません。

【Q & A】
Q.CO2レーザーで治療しても、再発することはありますか?
A.再発は少ないですが、脂漏性角化症が大きくて治療でとり残しがあったりすると、再発する場合もあります。

Q.放っておいたら、大きくなりますか?
A.大きくなっていきます。7~8mmを超えた場合、CO2レーザーで一度にとると傷あとが残りやすいので少しずつとる必要があります。

【とても似ていて見分けづらいガンの話】
ほくろなどと間違えやすく、できものだと思っていたら皮膚がんだったということは少なからずあるので注意が必要です。皮膚がんにはさまざまな種類があり、中でも特に頻度が高いのが基底細胞がんです。ほかにも悪性黒色腫(メラノーマ)や、皮膚がんの前段階の日光角化症などがあります。早期治療をすれば完治が望めますが、ほくろやシミなどと間違えて見落としやすいので、皮膚科専門医の診察を受けることが大切です。下記のような症状があったら一度診察を受けましょう。

◇悪性黒色腫:悪性黒色腫(メラノーマ)は、メラニンをつくるメラノサイトという細胞ががん化したものです。皮膚や爪に黒いシミや、盛り上がったほくろのような形で現れるのが特徴で、日本人では脚や足の裏に最も多く、次に頭、顔、首に多く見られます。早期に手術して完全に切除すれば完治しますが、真皮内に浸潤すると化学療法も必要で予後不良です。

◇基底細胞がん:皮膚の表皮の最下層である基底層や毛包などを構成する細胞から発生するがんです。80%以上が顔に見られ、特に鼻のまわりなど顔の中央に多く、原因には紫外線の関与が疑われています。初期は小さな黒い斑点なので、ほくろと間違いがちです。転移することは少なく、手術で切除しきれれば完治することがほとんどです。

【皮膚がんの見分け方】
◆ものすごく黒い
ほくろは色が均一なのに対し、皮膚がんの場合は色にムラがあったり、ものすごく黒かったりするのが特徴。
◆ひきつれている感じがする
皮膚がんの場合、その部分の皮膚がひきつれているような感じがすることがある。
◆境界線があいまい
色素班の輪郭がギザギザになっていて境界線があいまいだったり、色がにじみ出していたりしたら皮膚がんの可能性あり。
◆急激に大きくなる
小さかった色素班が短期間で急激に大きくなったら要注意。特に直径が6mm以上になったら皮膚科に受診を。
◆左右非対称
ほくろのように左右対称ではなく、皮膚がんは、左右非対称のことが多い。
◆くずれて潰瘍になる
色素班がくずれて潰瘍になっていたり、じゅくじゅくした感じがあったり、痛みやかゆみがあったら皮膚がんが疑われる。

□色素性母斑(ほくろ)・・・ほくろ、色のないものもある
母斑細胞という細胞が皮膚で増殖したものが色素性母斑、いわゆるほくろです。メラニン色素をつくる働きをもち、増殖する皮膚の深さやメラニン色素の量によってほくろの形態は異なり、黒や褐色の平らなものや、盛り上がったイボのようなものまでさまざまです。子供のころからあり、しだいに大きくなったり、膨らんでいくことがあります。色は時間の経過とともに抜けていき、肌色に近くなっていくことが多いです。良性のものなので放っておいてかまいませんが、気になるならCO2レーザーや手術で切除可能です。顔にほくろが多いと色黒に見えますが、切除することで色白に見えるという利点もあります。
加齢とともに母斑細胞の数が増え、ほくろが大きくなってきたり、膨らんでくることがあります。また、メラニン色素が減って色が薄くなり、肌色に近くなることも。肌色の出ぼくろは、ほくろの最終形といえます。

◆治療法1. CO2レーザー
CO2レーザーでほくろを蒸散させ切除します。ほくろは深く入り込んでいるので数回処置が必要な場合もあります。小さいうちにとると傷あとが目立ちません。7mm以上のものは2~4分割して段階的に切除します。

【Q & A】
Q. 足の裏のほくろって、よくないんですか?
A.足裏のほくろは悪性のものではないことがほとんどですが、悪性黒色腫の場合もあるので、疑わしい症状があれば早めに受診をしましょう。

□稗粒腫・・・目のまわりにできることが多いポツポツとした白い小さな粒状の良性腫瘍
真皮内にできる1~2mm以内のケラチン物質や細い毛が入った袋状の良性腫瘍で、女性に多く見られます。稗のような白い小さな粒状で、多数できることもあり、多い例では数十個以上できていたケースもあります。まぶたにできることが多いほか、頬、額、陰部にも発生します。生まれつき稗粒腫がある場合がありますが、水疱症などの皮膚がはがれるような疾患や、傷などの治癒の過程でできることもあります。真皮の浅い部分にできた袋状の腫瘍なので、皮膚科で注射針やCO2レーザーで穴をあけて、中の白いかたまりを取り出せばきれいになります。

◆治療法1. 針を刺す
注射針で小さく穴をあけ、中の白い角質を圧出する方法です。小さいものなら傷は1~2日で閉じ、きれいになります。自分で行うと傷あとが残るので必ず皮膚科で行いましょう。
◆治療法2. CO2レーザー
針で稗粒腫を取り除くと、角質をつくる袋が残り、再発することがありますが、CO2レーザーなら袋ごと角質のかたまりを取り除くので再発の心配がなく確実です。

【その他の"皮膚の表面にできる"できもの番外編】
□軟性線維腫 よくできるところ:脇
主に30代以降の成人に見られる肌色~褐色の柔らかい良性腫瘍です。肥満体型の人や女性に多く、わきの下、首、胸、そけい部など摩擦が多い部分にできやすいのが特徴です。CO2レーザーや、液体窒素による凍結療法、医療用ハサミによる切除で治療できます。

□老人性血管腫 よくできるところ:体幹
毛細血管が拡張、増殖してできる1~4mmほどの赤い良性腫瘍です。平らなものや隆起したものがあり、胸、背中、おなかなど体幹にできやすく、顔、腕、足にも生じます。成人後に発症し、加齢とともに増えます。CO2レーザーやヘモグロビンの赤に反応するロングパルスNd:YAGレーザーを高出力で照射すると、5~6㎜までの小さな血管腫をノーダウンタイムで治療することができます。

□老人性脂腺増殖症 よくできるところ:額
額や頬、鼻など皮脂腺が発達している部分にできるニキビのように盛り上がった黄色や白の皮疹です。高齢の男性に多く、大きさは2~6mmほどで、1個できることも多発することもあります。皮脂腺が異常に増殖することが原因です。治療の必要はありませんが気になる場合はCO2レーザーや手術で切除できます。

□汗管腫 よくできるところ:まぶた
汗を出すエクリン汗管が腫瘍性に増殖して生じます。まぶたやその周囲にできやすいほか、額、胸もと、首、腹部などにもできます。半米粒大ほどの黄色や肌色の粒々とした丘疹です。良性なので問題ありませんが、気になる場合はCO2レーザーや、高周波メスで汗腺を焼く方法などによって治療できます。

□日光角化症 よくできるところ:こめかみ
日光(紫外線)によって生じる皮膚がんの早期病変。こめかみや頬、鼻の頭などにできやすく、カサカサした赤いまだら状のシミのような状態です。皮膚がんに進展するので早めに手術や薬物療法、液体窒素による凍結療法などでの切除が必要です。

是非、ご一読ください。