雑誌『kiitos.(キイトス)』2016年vol.4(5月23日発売 掲載ページP56~57)

特集「BEAUTY TROUBLE Q&A ビューティーに関するお悩みはその道のプロに聞く!」に慶田院長の監修記事が掲載されました。
日々のスキンケアから、季節の変わり目に起こる肌トラブルに関する疑問を、皮膚科専門医である慶田院長が解説いたしました。

Q.1 肌状態を正しく知るためにはどうしたらいいでしょうか?
A.皮膚科で一度正しい診断を受けましょう。
実は、自分の肌質の見立てを間違っている方が意外と多くて、肌が粉っぽいから乾燥肌だと思っていたり、敏感肌だと思い込んでいたり、オイリー肌だと勘違いして洗いすぎていたりなど、間違ったスキンケアが肌荒れの原因になっている方もいます。自分のお肌が今どういう状態なのか、一度クリニックで正しい肌質を診断してもらうことをオススメします。それを分かったうえで、自分の肌質に合ったケアをするほうが、無駄のないスキンケアができますし、肌への負担も少なくなります。

Q.2 敏感肌とはどんな状態のことですか?
A.肌が弱っていて外部刺激を受けやすい状態のこと。
敏感肌とは名前通り、肌が敏感になっていますので、スキンケアはとにかく優しく、必要最低限のことを行ってください。そして気をつけたいのが、"過剰なスキンケア"です。お肌が弱っていたり、不安定でバリア機能が低下した状態だと、新しい化粧品や長時間のパックなどが刺激となってしまう場合があります。肌が安定するまでは、保湿クリーム1点に絞ったシンプルなスキンケアにしてください。また、春先からは紫外線が急激に増えるので、UV対策も大切です。敏感肌用のものなど、肌に合うものを選んで、UV対策を行ってください。

Q.3 肌ゆらぎとはどんな状態ですか?
A.季節の変わり目で肌が不安定な状態のこと。
原因は様々ですが、時期的に最も多いのが春先です。花粉の飛散量の増加や、年度の変わり目での生活環境の変化によるストレス、強い紫外線を浴びる、寒暖差などが刺激となって、急にニキビができてしまったり、乾燥したりなど、お肌トラブルが出る状態のことを言います。特に、外部環境の変化と、精神的なストレスによる影響も大きいと言われています。対策としては、原因となる刺激をできる限り遠ざけましょう。スキンケアは敏感肌と同様に、保湿をメインにした優しいケアを行うことが大切です。そして、ゆらぎ肌のときは、食事・睡眠・排泄(腸内環境)・ストレスコントロール・運動習慣のどれかが乱れている場合が多いです。肌の状態だけを意識するのではなく、日常生活の基本となるこの5つを見直してみることも大切です。

Q.4 肌のごわつき、乾燥が気になります。
A.紫外線などの刺激で角層が乱れているのかも。
紫外線が強くなる春先から夏にかけての時期は、実は角層が乱れやすく、乾燥しやすい時期でもあります。紫外線から皮膚を守るために、角層が厚くなることもあります。また、暑くなるとクリームを省いてしまうなど保湿不足も一因に。基本に立ち返り、1日2回の洗顔と保湿、光対策をしっかりするスキンケアを再確認しましょう。基本的には守りのスキンケアをベースにしつつ、合わない化粧品を使ってないか、メイクをするときに肌に刺激を与えるようなブラシ使いをしていないかなど、再度自分のスキンケアからメイク方法までを見直してみてください。

Q.5 春先のニキビ・吹き出物対策を教えてください。
A.ニキビとは、毛穴(毛包)に皮脂が詰まり細菌(アクネ桿菌)が繁殖し炎症が起きた状態のことで、様々な症状が混在します。
毛穴の入り口部分の角質が厚くなって毛穴を塞ぎ、皮脂が毛穴にたまった状態が白ニキビや黒ニキビです。この皮脂を餌として、アクネ桿菌が増殖し、皮脂を遊離脂肪酸に変化させ、集まった好中球が活性酸素を放出して炎症が起こり、赤く腫れ痛みを伴う赤ニキビが出来ます。さらに炎症が進むと、化膿した黄ニキビ(膿疱)や嚢腫・結節(しこり)へと悪化します。炎症がひどい場合、毛穴だけでなく毛包壁を破壊してしまい、クレーター状やアイスピック状に陥没したニキビ痕が残ってしまうこともあります。まずは、ニキビの原因や悪化因子を見つけるために、ライフスタイルやスキンケアの見直しを始めましょう。その上でニキビの予防と治療に効果的な外用薬と内服薬の処方、ケミカルピーリングやフォトセラピー、レーザーフェイシャルなどの照射治療を組み合わせてご提案しています。

Q.6 生理前にできちゃうニキビの対策法はありますか?
A.生理前の不調自体を緩和させることが有効。
生理前は黄体期といって、着床した受精卵を安定させる時期。プロゲステロンという女性ホルモンが増える影響により、便秘になる、水分を溜め込みやすくなってむくむ、皮脂の分泌が増える、気分が不安定になるなど、身体的にも精神的にも不調が現れて、ニキビができやすくなります。便秘はニキビを悪化させるので、水分や野菜をしっかり取る、ヨーグルトなどの発酵食品を摂る、ウォーキングなどの適度な運動をするなど便秘対策がおすすめです。また、毎月生理前にニキビがひどくなるようでしたら、医師に相談して低用量ピルを飲むなどして、女性ホルモンのゆらぎを整えるのもいいでしょう。

Q.7 ニキビ痕を薄くするにはどうすればよろしいでしょうか?
A.赤・黒のニキビ痕には照射治療や美白剤が有効です。
ニキビが治った後の、赤みが気になる場合は、フォトフェイシャル、レーザーフェイシャルなどの照射治療が有効で、黒っぽいシミのように色が残った場合は、これに加えて美白剤の外用が有効です。また、クレーター状の陥凹したニキビ痕の治療には、レーザーや針などで肌に微細な傷をつけ、新しいコラーゲン線維の生成を促進させることできめを整え、全体的にふっくらさせる治療が効果的です。

Q.8 毛穴タイプと対策法を教えてください。
A.加齢による「たるみ毛穴」に注意!しましょう。
毛穴は、窪んだ構造をしていて影となって目立ちやすい特徴があります。若年層では過剰な皮脂分泌と毛穴周囲の過角化により毛穴が詰まって押し広げられ、黒ずんで見えます。また、濃すぎる産毛の断面なども黒っぽく目立ちます。30代以降では加齢に伴うたるみにより、特に頬部がたるみ毛穴として目立ってきます。たるみ毛穴は老化によって真皮のコラーゲン線維やエラスチン線維の再成力が衰え、毛穴を土台から支える力が低下することで起こり、老けた印象を与えます。
対策として、まずケミカルピーリングなどで毛穴の過角化を改善し、肌のターンオーバーを整え、キメと角層のバリア機能を回復させます。また、レーザーで産毛を減らして毛穴を引き締めるのも効果的です。たるみ毛穴には、皮膚に小さな傷をつけ成長因子を導入して新しいコラーゲン線維の再生を促し、肌の弾力をアップさせると良いでしょう。

Q.9 乾燥で肌が荒れている状態でもUV対策はすべきでしょうか?
A.素肌で紫外線を浴びないことが大切です。
乾燥だけならもちろん日焼け止めを塗ってUV対策を行ってください。ただし、湿疹などの皮膚炎を起こしている場合は、皮膚科に相談し、速やかに治療しましょう。炎症が長引くと黒ずみます。また、治療中であってもできるだけ素肌では紫外線を浴びないようにしてください。紫外線を反射・散乱させるベビー用の紫外線散乱材などを塗り、日傘や帽子を使うなど、肌に負担をかけないUV対策を行いましょう。

Q.10 紫外線を浴びる季節にとりたい栄養素を教えてください。
A.紫外線から肌を守り、抗酸化作用を持つビタミンA(βカロテン)・ビタミンB・ビタミンC・ビタミンE、DHA、EPA、CoQ10、ルテインやリコピンなどのポリフェノール類などを補い、防御力を高めることが重要です。

Q.11 シミのタイプと、消えるシミ・消えないシミの見分け方を教えてください。
A.シミと呼ばれる状態にはさまざまな種類があり、それぞれ治療法も異なります。
シミには肝斑(かんぱん)、そばかす、日光性色素斑(老人性色素斑)、炎症後色素沈着などがあり、表皮にメラニン色素が過剰に蓄積された状態のこと。例えば肝斑は、目の周囲を除いた頬の高い位置や額などに、左右対称で現れ、やや灰色味を帯びた淡褐色をしていますが、あざと間違われることもあります。また、表皮内腫瘍の一つである脂漏性角化症(老人性いぼ)も初期は隆起が目立たず、シミと間違えやすいので注意が必要です。多くの方が、通常いくつかのシミが混在していて判断も難しく、症状によって治療法も異なりますので、気になる場合はまずクリニックで正しい診断を受けることをオススメします。

Q.12 クリニックでのシミのお手入れ方法とは?
A.内服薬とホームケア、レーザー治療などがあります。
クリニックでは、美白作用の高い内服薬(シナール、トラネキサム酸、ハイチオール、ユベラ)に加えて、メラニンの合成をブロックする作用のある「ハイドロキノン」「ルミキシル」、ナノカプセル化をほどこしたビタミンA化合物「トレチノインナノエッグ」などの外用薬を組み合わせたホームケアが基本となります。また、メラニンの排泄を高め美白効果のあるケミカルピーリングに、メラニンの黒に吸光性の高いレーザーやフォトフェイシャル(光治療)を組み合わせることで、全体的なくすみ、肝斑などの色ムラを改善することができます。さらに、濃い色のシミには高出力照射が効果的です。

Q.13 クマの改善にはどうすればいいですか?
A.クマには大きく4種類あり、治療法も異なります。また、何種類か混在していることが多いので、自分のクマがどの状態なのかを知ることが大切です。
茶グマ:
皮膚の代謝が低下し、メラニンの沈着、角層の重層化によるクマ。また、こすりすぎや皮膚炎による炎症後色素沈着でも生じます。茶グマの治療は、シミ治療で改善することができます。
青グマ:
冷えや疲れで血流がうっ滞し、青っぽく見えるクマ。皮膚が薄く色白な方が目立ちやすいです。小児期から認める場合もあります。青グマの治療は下まぶたのコラーゲン線維を厚くするような治療で改善することができます。
たるみグマ(黒クマ):
加齢により目の下のコラーゲン線維が劣化して細かいシワが生じ、皮膚の伸びやたるみ、陰影が目立ってできるクマ。目の下の目袋(buggy eye、眼窩内脂肪の突出)もたるみグマの仲間です。たるみグマ(黒クマ)の治療は、たるんだ皮膚を引き締める照射系治療が主体となります。ごくやわらかいヒアルロン酸(非架橋製剤)やPRP(多血小板血漿)注入などで、コラーゲン線維の再生を促すことも有効です。
凹みグマ(へこみグマ):
加齢変化で生じた目の下の陥凹が目立つクマ。凹みグマの治療は、ヒアルロン酸注入で凹んだ部分をボリュームアップするのが一番です。目周りの皮膚がたるんだ加齢肌では、皮膚を引き締める照射系治療を組み合わせないと、たるみが目立ってしまったり、新しいシワが増えたりすることがあります。お肌の状態の見極めと、正確な注入が求められます。

Q.14背中・胸にニキビ・あせもができちゃうのが気になります。
A.体のニキビの予防は、ちゃんと洗うこととUV対策が重要。
ニキビができる毛穴は脂腺性毛包と呼ばれ、もともと上背部や上胸部のあたりは、顔と同様に多く存在し、ニキビが好発する場所です。また、紫外線などで毛穴の角層が厚くなると皮脂が毛穴に詰まる原因にもなります。夏場は顔だけでなく、ボディにもUV対策を忘れずにしてください。また、清潔に保つことも大事ですが、刺激を与えるのはよくないので、手で泡立てた泡で優しく洗うなど、できるだけこすらないように注意してください。炎症が起こった場合は抗生剤を塗ったりして、速やかに炎症を治めることがニキビ痕を防ぎます。顔のニキビと同様に食事などの日常生活を見直すことも対策になります。
夏場によく出るあせもは、診察してみると、汗の刺激による皮膚炎(汗荒れ)の場合が多いです。肌バリアの状態が悪いと汗をかくだけでも刺激になって、肌荒れする方もいます。対策としては、なるべく汗をかかないよう環境を整え、汗をかいたらできるだけ素早く洗い流すのが理想です。外出中などで洗い流せない場合は、せめて優しく濡れタオルで汗を拭き取るなどしてください。風通しのよい服や締め付けない下着を身につけるのも有効です。

この14個のQ&Aをマスターすれば、日常のケア、トラブル時の対策など基本的な肌ケアをしっかりご理解いただける内容です。さらにホームケアから一歩進んで、美容医療に関する入り口もわかりやすく解説しています。
是非、ご一読ください

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