雑誌『Mart』2021年4月号(2月26日発売)
特集「手荒れやささくれがひどいんです」(掲載P139)に慶田院長の監修・取材記事が掲載されています。
冬になると例年手の乾燥が気になりますが、今年は新型コロナ対策で手洗い回数が増えたり、アルコール消毒を頻繁にしたりするので、手のカサカサに悩む人も多いのでないでしょうか。そこでコロナ禍での手のケア方法をご紹介します。
■過度な手洗いや消毒は乾燥や手荒れの原因に■
手の皮膚の一番外側の皮脂膜は、手洗いなどで皮脂が落ちても30分ほどで元に戻ります。問題なのは、皮脂膜の下にある角層のなかで角質細胞同士の間を埋めている、「細胞間脂質」が流出することです。手を洗いすぎたり過度のアルコール消毒をしたりすることで流出しがちになります。この「細胞間脂質」は角層の水分保持の約8割を担いますが、一度水分を失うと、ターンオーバーを経ないと元には戻りません。さらに皮膚の表面には美肌菌とよばれる常在菌がいて抗菌ペプチドを作っていますが、手の洗い過ぎは健全な肌に必要な皮膚常在菌のバランスを崩し、肌荒れなどのトラブルを起こす原因となります。コロナ禍でつい神経質になりがちですが、過度な洗浄や消毒はかえって手荒れの原因になります。適切なタイミングでの手洗いを心がけましょう。
≪ポイント1≫石けんで手を洗うのは3つのシーンだけでOK
・外から帰ってきたとき
・調理前・食事前
・排便後
小さい子どもの場合は、排尿後も石けんで手を洗うといいですが、大人は上記の3回以外は流水の手洗いで十分です。また、石けんで洗った後はアルコール消毒の必要はありません。
≪ポイント2≫手荒れを防ぐ習慣を意識しましょう
・冷水や42℃以上のお湯を避けぬるま湯で家事をする
・水仕事をするときはゴム手袋をする
・冬の外出時は手袋をして手を冷気にさらさない
・こまめにハンドクリームを塗る
家事をするときなどは血行が悪くなる冷水や皮脂がとれてしまう熱いお湯の使用は避け、できれば水に触れずに済むよう手袋をしましょう。外出時も手を冷やさないようにし、ハンドクリームで保湿しましょう。
≪ポイント3≫ハンドクリームの選び方&つけ方を知りましょう
・頻繁につけやすいテクスチャーが軽めで刺激の少ないものがおすすめ
・手荒れをしているときは尿素入りのものは避ける
・手洗い後と夜寝る前につける
うるおいが逃げてしまう手洗い後と、手を使わず保湿成分が浸透しやすい就寝前にハンドクリームで保湿をしましょう。尿素入りは刺激になるので、荒れているときは使用を避けた方が良いでしょう。
■手荒れしてしまった場合のケア方法■
手荒れをしている人は水分を抱える力のあるセラミドやグリセリンなどに加え油分が多いクリームやバームをやさしく塗りましょう。しもやけやひび割れがあるなら、血流を上げるビタミンE入りのものがおすすめです。手荒れがなくベタつくのが苦手なら、軽いローションでも大丈夫です。もし、手荒れが悪化した場合は、早めに皮膚科を受診しましょう。悪化すると、皮膚のかゆみや赤みが強くなる、皮膚が割れてくる、小さな発疹や水ぶくれができる、かきつぶすとジュクジュクやかさぶたになるなどが混じり合った「手湿疹」とよばれる症状が現れます。手湿疹の症状を放置すると他の細菌感染のリスクが高まります。ひび割れや赤み、ガサガサの程度が強い場合は、ステロイド外用薬を適切に使用し、まず炎症を抑えます。顔に塗るような弱い薬では効きません。症状に合わせて適切なステロイド外用薬を使用しケアしましょう。